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索敵

インセクト(虫族)ブラントン

 ヘリック大統領は、ゼネバスのいうような政治だけの人物ではなかった。偉大な父より帝王学を学び、勇気と愛そして知恵を備えた情熱あふれる青年大統領だった。弟との決闘のときに、議員たちが味方したのも、そのすぐれた人格によるものであって断じて策略によるものではなかった。

 

 父が彼におしえた帝王学のひとつに「戦わずして勝つ」があった。それは、敵を知りつくし先手をうち、敵の行動を封じることであった。

 

 かつて弟ゼネバスが共和国の武力強化をすすめていた時にも、兄ヘリックは、一方で敵をさぐるための偵察部隊を編成し、隊員を育てるとともに、ゾイドの開発にも力をそそいだ。皮肉なことに、兄と弟が戦ういま、共和国の偵察部隊はその能力を大いに発揮しはじめたのである。

 

 偵察部隊司揮官ブラントンは虫族(インセクト)の出身で、クモ型ゾイドグランチュラを操り敵陣に深く潜入、地味な活動ながら重要な任務をこなしてきた。闇でも目がきき、独特の触覚を持ち、風の向き、匂い、温度、波長(生きものが発する電波)を感知し、どの方向に、距離はどれくらいで、部隊の規模は、ゾイドの種類は…まで瞬時に読みとるスーパーパワーをもっていた。

 

 それは、生きたレーダーであった。帝国軍にとってブラントン偵察部隊ほどやっかいな相手はいなかった。

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