中央大陸全面戦争
2大部族戦争時代
中央大陸における2大部族間戦争は、大陸全土を戦場と化す大規模戦争へと発展していった。
大量のゾイドが投入され、武器、弾薬、それを使う戦士も含め、大量の軍事物資が消耗された。全面戦争は、可能な限りの人的、物的資源を、いかに効率よく、いかに多く投入できるか、で勝敗が決定する。かつての勇気と信念が勝利をもたらす、あるいは、負けても名誉だけは残った、古き良き部族間紛争とは規模も性質も異なる巨大な潮流だった。
西、東、両陣営は一歩も引かず、大陸全土で激しい戦闘が続き、戦争は完全に長期化の様相を見せ始めた。戦いが長引くにつれ、かつては美しい自然と、交易により潤った大陸の街々は荒れ果て、人々の心は荒んでいった。
国家を運用するための資金と資源は、全て戦争を完遂するために投入され、戦士の消耗により、徴兵される兵士の年齢は日々下がっていった。
人々の生活は困窮し、恐怖と絶望が大陸全土に広がり、生活物資までもが枯渇し始めた。大陸は、一進一退の攻防に明け暮れ、女、子供たちは戦火で傷つき、領国間の裏切り、寝返り、クーデターの発生、密告が飛び交い星人の心は乱れ、かつて平和と愛に満たされた星は、疑いと裏切りの星へとその姿を変えようとしていた。
平和と、民たちのしあわせのための挙兵だったはずが……
風族の長であり、東側のウォー・ロード(戦争指導者)であるヘリックは大いに悩んだ。へリックは、星人の心が荒み、大陸の緑が焼かれ、逃げまどう罪なき子どもたちの姿に心を痛め、自らに課した平和のための戦いに次第に疑問を抱くようになった。
このままでは、敵も味方も、築き上げてきた全てを失う!
しかし、今では両陣営には憎しみだけが増大し、もはや休戦も和解も不可能であった。ヘリックは戦争を終わらせるための方法を必死で模索した。
ある日、古い兵法書を紐解いた時だ。部族同士の二項対立を打開するには、第3の脅威が必要である、との戦術論に彼はひらめきを覚える。彼は、曽祖父の時代の冒険家が残した「北方暗黒世界冒険記」を思い出した。
中央大陸の北西には北極圏へとつながる広大な永久凍土が広がっている。
曽祖父の家臣でもあったその冒険家の文献によれば、そこには外界と交流を持たない未知の部族が住み、いつしか豊かな大陸への進出を夢見てると書かれていた……