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風族と地底族

領国の時代

 1850年頃、部族間でお互いに不足している能力を補いあい食料の増産をはかる共同体が生まれはじめた。この星人たちが「自然は敵」「星人と動物たちは仲間」という長く苦しい自然との戦いでいつの間にか身につけた教訓を実行に移したのであった。 やがて、部族間の平和的な統合や合併が進められ、領地が広がり、小さな国(領国)が誕生した。 

 しかし、平和な時期は長く続かなかった。 

 優れた能力を持つ領国が、他の国を吸収し強大になってゆくに従って、弱小の領国がそれに抵抗したり、内輪もめからひとつの国が分裂するなどの悲劇が頻発しはじめた。 

 当時は大陸に約30前後の≪領国≫が林立し、その民たちは領国に忠誠を誓っていた。このことは我々は運命共同体なのだ、という意識のめばえであり、同時に領国に帰属しない民たちは、無法の野蛮人として扱われる、という集団意識の芽生えでもあった。

 1900年に入るやいなや、優れた星人の奪い合いやゾイドの盗み合いが領国間で日常的になった。そこで領国の主たちは、狩猟や輸送のためにのみ使っていたゾイドたちを改造し本格的に兵器へと転換しはじめた。
 こうなるともう歯止めがきかなくなる。改造競争が激化し改造すればそれを使いたくなるのが常で、国境での小競り合いは絶え間なくなり、やがて始まる大規模戦の伏線となっていった。このころ、すでに幾つかの領国は、家畜ゾイドによる交易ルートの安全の確保や、外敵に対しては共同で防衛に当たるといった原始的軍事同盟契約を結び、結束していった。
 しかし、中央山脈を挟んで軍事同盟契約が結ばれることはなかった。中央大陸を東西に分断して走る中央山脈、この巨大な壁の存在が、大地の東と西の環境を分けたからだ。

 中央山脈は気候に差をつけた。惑星Ziの自転方向と同じ方向に吹く強い風、すなわち偏西風は、大洋の深層海流の温度変化を中央大陸へと持ち込む。この結果、偏西風を中央山脈で遮断される東側は降雨量も安定し、一年を通じて温度差の比較的少ない温暖な気候に恵まれていた。
 それに対し、中央山脈の西側は四季の激しい温度変化をまともに受ける厳しい気候に曝されていたのだ。
 このため、大陸の東と西とでは、双方ともほぼ同じ面積の平坦地を所有しながら、穀物の収穫、生活の安定という点に於いて、明らかな差が生じていた。
 ZAC1920年頃、東と西の交易がさかんになると、この事実は多くの人々の知るところとなる。

 この時、西側諸国の人々の不満を見て取った者がいた。地底族のリーダー「ガイロス」である。

 彼は地底族が潜在的にもつ"地上領土への憧れ"と、西側領国民の不満をみごとに結びつけ、豊かな東側領土内に、西側領国民のための植民地を提供せよ!と強く主張、西側領国の民の代弁者となり人々の心をつかんだ。

 そして地底族を中心に西側領国連合を結成すると、周辺諸国へも圧力をかけ、これに加盟させていった。

 

▲ 地底族のリーダー ガイロス

 こうして、急激に団結しつつある西側の流れに、ただならぬ危機感を覚えた風族のリーダー「ヘリック」は、すでに結成されていた東側交易ユニオン加盟国に訴えかけ、東側領土を共同で防衛するための契約"東側通商加盟国安全保障条約"を締結する。

 これは1年を待たずに軍事同盟へと発展。ここにZiの歴史上、類を見ない大規模な軍事同盟が2つ、誕生した。

▲ 風族の長 ヘリック

 一方は、地底族のリーダー「ガイロス」を実行指揮官とする「西側領国連合」であり、もう一方は風族のリーダー「ヘリック」を長とする「東側安全保障連合」である。 これが、いずれ巻き起こる大規模な全面戦争の前触れである事は、誰の目にも明らかであり、中立を望みたい領国も、この2つのいずれかの軍事同盟に加盟しなくては生き残れない事態となった。

 

 2大部族戦争時代の幕開けである。

 

 豊かな東側とそうでない西側…。

 

 西側領国は4年に一度のサイクルで、大洪水、寒波、日照りに見舞われ、飢えと渇きで人々は疲弊した。東側はこれに対し混乱を恐れ、西側からの難民受け入れを拒み東西領国の対立は急速に深刻化していった。

 

 策略家ガイロスの真の目的は、豊かな東側領土の完全支配にあった。彼は中央山脈の下を通り、東側へと続いている地下洞窟を使い、6万もの大軍を東側へと侵攻させ、一気に東側領土の1/2を制圧せんと目論んだ。

 この侵攻は辛くも東側がくい止めたが、この戦いを期に、西と東の軍事的対立は決定的となった。

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