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セイスモサウルス

 ZAC2106年春、中央大陸。ヘリック共和国軍にクック要塞を奪われたネオゼネバス帝国軍は、ただちに反撃を開始した。だがクックは、四方を大河と山脈に囲まれた天然の要塞だ。共和国軍には、最強のゴジュラスギガ部隊もいる。圧倒的戦力を誇る帝国軍をもってしても、クック攻略はたやすいことではなかった。
 
 戦局は膠着し、やがて季節は夏へと移っていた。無数の敵に包囲されながらも、共和国軍士官たちの表情は明るかった。サラマンダーやバスターイーグルなど強力な空戦ゾイドにより制空権は保たれ、補給路も確保した。そして、何よりもゴジュラスギガの存在が、兵士たちの士気を高揚させ続けている。古代チタニウムコーティングを施されたギガの装甲は、帝国の兵器をほぼ無効化できる。西方大陸や暗黒大陸に散り散りになった共和国部隊の集結、再編成を待つまで、持ちこたえられる目算は十分にあったのだ。突然の一条の閃光によって、両軍の均衡が破られる時までは!
 
 バスターイーグルから受け取った物資を運んでいたアロザウラーが、閃光に撃ち抜かれ、円形の切り口を残して上半身を失い爆発した。ついでゴルヘックスが、レオストライカーが、次々と降り注がれる閃光に、なすすべもなく消えていく。岩場に身を隠しても、その岩ごと消し飛ばされた。
 謎の砲火の前で、共和国のゾイドは動く的でしかない。この戦闘とは呼べない、一方的な虐殺の中で、ついに1機のゴジュラスギガの装甲が撃ち抜かれた。

 ディメトロドンにジャミングされているとはいえ、ゴルヘックスのレーダーは、狙撃地点はおろか、敵の機影すら掴めないでいた。混乱する共和国軍士官たち。彼らは、通信を絶ったバスターイーグルが最後に送ってきた映像を見て絶句した。帝国軍マークをつけた、見たこともない雷竜型ゾイドが、レーダーの策敵範囲のはるか外から超長距離砲撃を放つ様子が映っていたからだ。
 
 今までのどんな雷竜型ゾイドとも違う、長大なシルエット。それはネオゼネバス帝国が、その復権の旗印に掲げた新型ゾイド、セイスモサウルスであった。
 
 パニックに陥った共和国前線に、帝国軍が突撃を開始した。ひときわ巨大なセイスモサウルスの姿が、共和国軍兵士たちのさらなる恐怖を呼び起こし、防衛線は無残に踏みにじられていく。

 味方の撤退が続く中、一群の共和国部隊がセイスモサウルスの前に立ちふさがった。ゴジュラスギガとアロザウラー、レオストライカーからなる混成部隊だ。

 ギガの前に展開したレオストライカー隊が、Eシールドを発生させた。セイスモの31門レーザー砲の雨がくる。無数の風穴を開けられ、崩れ落ちるレオストライカー隊。だがこの犠牲が、ギガに反撃のタイミングを与えた。

 追撃モードに変形するギガ。残存ゾイド部隊を従え、包囲網を突破し、セイスモサウルスに迫る。セイスモサウルス護衛の任につくキメラ部隊、シザーストーム、レーザーストーム、スティルアーマーが迎え撃つが、ギガの猛攻は止められない。
 
 ギガのバスター砲が火を吹いた。命中。セイスモサウルスの横腹から、濛々と煙がたちこめ、周囲の視界をさえぎる。ギガのパイロットは、セイスモサウルスの撃破を確信した。
 だが一瞬後、爆煙の中から悠然と現れたのは、僚機シザーストームとレーザーストームを融合武装させた強化型セイスモサウルス「アルティメットセイスモ」であった。
 セイスモサウルスの腹部にマウントされたクレセントレーザー砲がレオストライカーの装甲を分断し、チェーンシザーがアロザウラーを地面ごとえぐる。さらに荷電粒子が31門の砲塔からシャワーのように放たれ、共和国軍の小型ゾイドを次々に消していく。
 
 本来、後方支援機であるはずのセイスモサウルスが進軍してきたのは、アルティメットセイスモの圧倒的な戦闘力を共和国軍兵士に誇示し、抵抗の意志を削ぐためだった。

 すでにこの前線で健在な共和国軍ゾイドは、ギガだけだ。だがギガにはまだ、この局面を変えうる最後の切り札があった。32門ゾイド核砲。荷電粒子砲をはるかに超える超破壊兵器。その威力ゆえに、ギガ自身の命を奪う禁断の兵器だ。ギガの背ビレが激しく発光する。だが、それが放たれるより一瞬早く、超集束荷電粒子砲の零距離射撃がギガのゾイド核を撃ち抜いていた。共和国軍を支えた誇り、ギガの巨体がゆっくりと崩れ落ちた。
 
 それはアルティメットセイスモの勝利と、ネオゼネバス帝国の中央大陸完全制圧が決定した瞬間でもあった。

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