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ディアントラー

 中央大陸に残存するヘリック共和国部隊は、途絶えがちな補給物資をやりくりしながら、ネオゼネバス帝国を相手に善戦ともいうべき戦果をあげていた。これは、帝国の主力部隊が首都防衛の任についていたことも大きいが、何より解析不能とされていたキメラ・ブロックスの制御コードを入手したことが、最大のポイントであった。

 劣勢を強いられていた戦況を覆すため、共和国軍の残留部隊はゴルヘックス等の電子戦ゾイドを駆使することで、キメラ・ブロックスに対抗していたのである。だが、指揮機ともいうべきロードゲイルの出現により、この均衡は破られた。 ロードゲイルの成功を見たキメラ制御専用機体の開発は続行され、陸戦においてより柔軟なキメラ運用を可能とする新型機体の計画が持ち上がる。

 やがて、小型ながら強力な電波発信装置を備え、ロードゲイルの指令電波を受信、増幅させる有人キメラ、ディアントラーが戦場に姿を現す。ディアントラーに装備されたキメラを操ることができるプラズマブレードアンテナは、空戦ゾイド、シュトルヒに装着可能で、操縦困難とされたロードゲイルに代わり、陸戦同様空戦キメラ部隊を指揮するため、積極的に戦闘に参加する事が可能となった。
 ディアントラーが実戦配備される頃になると、電子戦ゾイドによるキメラ・ブロックス攻略戦術は通用しなくなったため、共和国軍残留部隊は戦術の見直しを迫られることになってしまう。
 
 写真は共和国軍の偵察部隊が撮影した、帝国軍による残留部隊掃討作戦時のものである。この時、帝国軍は死霊兵団(リビング・デッド・バタリオン)を投入しており、指揮機の撃破に向かった共和国軍の部隊は、この予期せぬ強敵によって返り討ちにされている。

 この機体と同じフォーマットの機体が複数目撃されていることから、活動を停止したゾイドと融合したものではなく、あらかじめ仕様として組み替えられたものではないかと推測されている。一説には、この時期、ネオゼネバス帝国ではバーサークフューラーの次世代機の開発に着手しており、その過程で生まれた試験機にジェノザウラーの外装を装備したものとする意見もあるが、真相は未だ明らかにされていない。


 ブロックスは、デフォルトのフォーマットこそ存在するものの、戦況に合わせて短期間に仕様が変更されるのが最大の長所であり短所でもある。敵陣営による機体の同定を困難にすることは戦術的には有効であったが、同様にこの時期、加速度的に増加する機体データに、両陣営のデータベース更新が追いつかなくなる事態も生じている。

▲ジェノアントラー

ディアントラーをチェンジマイズしたものの中でも最大の機体であり、荷電粒子砲こそ装備していないが、高い格闘能力を有している。このジェノザウラーをボディに利用したキメラ・ブロックスは、この状態の指揮機の他にも数種類が確認されている。

 ブロックスという技術の実戦投入により、個々の整備性、生産性こそ向上したものの、完成した機体の管理という面では大きく後退したといっても過言ではなかった。事実、ヘリック共和国、ネオゼネバス帝国では、前線においてローカライズされた機体に関しては、その管理を放棄していた。補充された物資が記録されるのみで、それがどのような仕様で運用されたかは、特別な戦果をあげた場合を除き、記録に残さなかったのである。

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