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人工ゾイド開発計画

 補給物資とともに到着した見慣れぬ2種類の小型ゾイドは、わずか数刻後にはまったく別の中型ゾイドへとその姿を変えていた。軍部が外部の民間企業に開発を委ねたという新しいゾイドのウワサは、この最前線にも届いていたが、ライオン型であるとも、海竜型であるとも伝えられ、その実態は判然としなかったのが実情だった。

 しかし、オレは目の前にあるそれを見てすべてを理解した。そう、はなからこの新しいゾイドに実態など存在していなかったのだ。

 あえて実態というべきものが存在するとしたら、その体躯を形成する四角い物体がそれに相当するのであろう。極限まで合理化された機体構造は使い勝手もよく、操縦性も洗練されている。基本出力自体は同等クラスのゾイドに及ばないものの、整備施設が貧弱な最前線でも地形や戦況にあわせて自由に形態や武装を変更、増設できるのは、心強いかぎりだ。
 
 あまりにメカニカルなために、果たして、これまでのゾイドと同じように心を通わせることができるのかが唯一の心配であったが、それも杞憂に終わったようだ…。

ゾイドブロックス

 惑星Zi、海を隔てて中央大陸の東に広がる東方大陸でも、ZAC2056年の大異変により生態系に甚大な被害を受け、ゾイド野生体が絶滅の危機に瀕していた。東方大陸の国々は野生体を機獣に改造し利用することを禁止し、人工的にゾイドを繁殖させる研究を推し進めた。民間企業ZOITEC(ゾイテック)はゾイド核の人工化に成功。従来ゾイドとは異なる人工のゾイド「BLOX」(ブロックス)を誕生させた…。
 
 人工ゾイド開発計画は、「まったく新しい金属生命体の創造」をテーマに「BZ計画」というコードネームで開発が進められていた。

 まず、人工ゆえに野生体の確保は必要なく、コアへの遺伝子情報のプログラミングにより、あらゆる生体の構成を認知させることができた。これは惑星Ziに存在する様々な生体を人工的に構築できるという事実である。
 
 ゾイドは野生体の持つ本能を抑えるほど扱いやすく、逆に開放するほどにゾイド本来の強さを発揮する事ができた。人工ゾイドコアは、制御を容易とするために出力は低めに設定されていたが、補助ゾイドコアを増設する事で強さと扱いやすさの両立に成功。

 ブロックスは人工コアブロックを中心に、モチーフとなる生体の生存領域によって、陸、海、空の各種ブロックで本体を、高度にシステム化された駆動フレームと外装によって四肢が構築されている。それを利用した最大の特徴として、開発段階からあらゆる生体の行動パターンをシミュレートできるよう、各パーツは汎用性の高い構造とし、プログラムの変更により瞬時にその構成を変える事が可能となり、1つの個体が様々な形へと変化できる、「チェンジマイズ」という他のゾイドには無いシステムを有している。更に足りないパーツを他の個体と共有する事、すなわち複数の個体との合体により大型ゾイドとしての構成を完成させる「コンビネーション」システムも確立した。こうしてゾイテックによるまったく新しい金属生命体「BLOX」は誕生した。
 
 ブロックスに最初に着目したのはネオゼネバス帝国だった。低コストで大量生産できるブロックスは、戦力不足に喘ぐ帝国にとって理想的な兵器である。戦力増強とパイロット不足を補うため、敵性ゾイド破壊システムと呼ばれる、自立行動型無人ゾイドとしての開発が進められていた。
 しかしブロックスの平和利用を願うゾイテックはネオゼネバスとの関係を断ち切り、ヘリック共和国への支援へと方針を変える。こうして帝国と共和国で異なるブロックスの開発競争が始まった。

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