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キメラ・ブロックス

 新生ゼネバス帝国の新型ゾイドの西方大陸上陸の情報は、共和国軍司令本部を震撼させた。この頃、共和国軍では西方大陸周辺に厳重な警戒網を敷き、新帝国軍の侵攻に備えながら、来るべき中央大陸奪還作戦の準備を進めていた。一方、中央大陸を制圧している新帝国も、その国力の脆弱さ故、共和国への追撃の一手が進められないでいた。
 
 新帝国のゾイドが、厳重な防衛線を突破して西方大陸に上陸することができたのは、それが小型ゾイド数機に過ぎない小規模な部隊であったためで、部隊規模から鑑みて強行偵察を目的としたものと推察されていた。共和国軍司令本部は戦略陸軍による迎撃作戦を展開するが、その数刻後、派遣した部隊がことごとく全滅するという予想外の事態へと進展していく。

▲戦場でゾイドコアを破壊され大破したジェノザウラーにキメラ・ブロックスが融合。さらなる巨躯を得て凶暴性を増した凶獣の瞳が赤く光る。

 帝国の小型ゾイドはロブ平野の戦場跡に到着すると、放置された未回収ゾイドの残骸と融合し、強大なゾイドへと進化を遂げ、共和国軍の迎撃部隊を返り討ちにしたのだ。戦力を増した新帝国軍のゾイドはそのままニクシー基地を目指して移動を開始するが、共和国軍はその総力を挙げてこれを阻止、敵部隊をどうにか壊滅させることに成功している。
 しかし、たった数機のゾイドによってもたらされた被害は甚大であり、ニクシー基地の駐留部隊は、その戦力の25%に相当するゾイドを失ってしまう。

 この新帝国の最新鋭ゾイドこそがキメラ・ブロックスと呼ばれるタイプであり、新帝国軍は、その実戦テストとして西方大陸上陸作戦を敢行したのだ。この恐るべき新戦力の存在が明らかになったことで、共和国軍の中央大陸奪還作戦は大幅な見直しを余儀なくされた。

キメラ・ブロックスの死霊兵団

 キメラ・ブロックスは、その戦闘能力の高さもさることながら、周囲のゾイドを取り込んで独自に進化(チェンジマイズ)していくことで、より強力な存在へと成長していく。この自己進化能力は、石化(ゾイドコアが活動を停止した状態)したゾイドをも取り込むことが可能で、こうしたゾイドの残骸と融合した個体は、「リビング・デッド・バタリオン」として分類されている。
 基本的にゾイドコアが活動を停止、すなわち死んでいるゾイドを取り込む際、あらかじめそのゾイドコアの情報が入力されている必要があり、その対象は、帝国製ゾイドに限られている。また、その際には、対象からゾイドコアの情報を引き出すことができないために、純粋に現地調達の結果として発生することが多いといわれている。

禁断のプログラム

 ブロックス開発計画の情報を入手していた帝国は、人工ゾイドコアの解析過程でそのプログラム内にプロテクトのかかった領域を発見する。これは、異なる遺伝子を融合させ、惑星Ziに存在するいかなる生体にも当てはまらない、未知の生命体を創造する禁断のプログラムであった。
 コードネーム「CHIMERA」と名付けられたこのプログラムにより、生体の攻撃特性の高い部位を融合し、試作されたブロックスは高い戦闘能力と引き換えに、制御不能の凶暴な性質を持っていた。そのため、人による操縦は事実上困難であり、早い段階で無人ゾイドとしての開発が決定した。こうして完成を見た機体は、プログラム名からキメラブロックスと名付けられ、どの生命体にも当てはまらない異形の姿をした悪魔の兵器へと姿を変えていった。

▲1機で複数の機能を持つキメラ。無人機であるため、兵士が消耗することもない。

 構成機体の闘争本能のみに委ねられ、戦場に放たれたキメラブロックスは、同一特性を持つ他の機体以外、すべてのゾイドを攻撃し目標達成後に自己判断で基地へと帰還する。


 破壊のみに特化したキメラ・ブロックスは、従来のゾイドとは一線を画する存在で、帝国内部においても、その存在を危惧する声が少なくない。

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