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新型ブロックス開発競争

▲基地を飛び立ったバスターイーグルは、最新鋭のマグネッサーウィングにより、超高空へと急上昇し、上空からの砲撃により、敵施設などを破壊する。現用のブロックス・ゾイドの中でも最大級の大きさを持つバスターイーグルは、バスターキャノンなどを搭載する関係で作戦行動時間に制約があるという欠点も持っている。

 共和国にとって中央大陸の奪還は悲願である。

 しかし、共和国軍は前線においてネオゼネバス帝国による柔軟な戦術に翻弄されることが多かった。特にダークスパイナーを中心とした電子戦用ゾイドの存在は、作戦遂行の大きな障害となっていた。ジャミングウェーブを遮断する古代チタニウム装甲を持つゴジュラスギガが完成しているとはいえ、その個体数は少なく、戦局を大きく左右する存在たり得ない。

 その戦局を抜本的に見直す必要に迫られた共和国軍首脳部は、ジャミングウェーブの影響の及ばない超長距離からの狙撃により敵電子戦用ゾイドを撃破する戦術を考案。それを実践するためのゾイドの開発に着手する。

 こうして、ダークスパイナーを一撃で行動不能にする装備としてゴジュラスギガ用に開発されていたバスターキャノンを搭載し、その素体にブロックスを用いることで短期間に開発されたゾイドがバスターイーグルである。

新たなるブロックスの登場

 キメラ・ブロックスの出現は、共和国軍首脳部だけではなく、ブロックスの研究機関スタッフたちをも震撼させた。キメラ・ブロックスの前線における進化のスピードは驚異的で、戦闘を経る度にその戦闘能力は増大し、戦術も狡猾になっていたのだ。共和国軍では、バスターイーグルによる遠距離攻撃、ゴルヘックスによる指揮コマンドの撹乱など、戦術的手段によって対抗していたものの、ゾイド単体の戦闘能力では、キメラ・ブロックスが既存のゾイドを凌駕していることに変わりはなく、実戦配備されている4種のデフォルト・ブロックスに続く強力な新型ブロックスの開発、特に主力機であるレオブレイズの性能向上型の開発は急務とされていた。
 
 通常のゾイドと異なり各部がモジュール化されており、現地改造も容易なブロックスは、中央大陸に駐留する残存部隊への支援物資としても非常に有用であった。これは、共和国軍残存部隊の活動拠点と西方大陸の共和国基地との間にネオゼネバスの首都が位置しているという地政学的な関係に起因している。

 つまリ、西方大隆から補給物資を秘密裏に中央大陸へ輸送するためには、小規模の輸送船団を用いるしか方法はなく、それすらもネオゼネバスの海上部隊に阻止されることが少なくなかった(共和国軍がモサスレッジ、ネオゼネバスがディプロガンズといった水中活動を主体としたブロックスを配備した背景には、この補給路を担う海路を巡る攻防があったからに他ならない)。すべての部品が同一規格であるブロックスには、そうした事態が生じても生き延びた物資が部隊に届けられればそのまま部材として運用できるというメリットがあった。

 レオブレイズの性能向上は、新型ブロックスによって対応を図ることが検討される。前線でのブロックスの実戦データの収集・解析が行われた結果、ライガーゼロにおけるシュナイダー、パンツァーに相当するオプションの必要性が導き出された。チェンジングアーマーの開発資料をべースに開発が進められた新型ブロックスは、単体の性能として、既存の4種のゾイドに欠けている火力の充実に主眼を置く形で進められることとなる。
 しかしキメラ・ブロックスの戦闘能力の向上速度を考慮した場合、このゾイドの実戦配備が完了される頃には、戦場において絶対的な優位が保てないことが判明する。この問題を解決するため、新型ブロックスの性能向上モジュールは汎用のものへとシフトし、開発期間を短縮、実戦配備のタイミングを早めることで戦況に対応し、懸案である主力ゾイドとしてのレオブレイズの強化案に関しては、独自に発展型の開発を開始することとなった。
 
 こうしてロールアウトしたのが重武装の支援用ゾイド・ボルドガルドであり、その装備は、実戦配備されている4種のブロックスの強化パーツとして運用できることを前提としている。またレオブレイズの発展型は、レオブレイズの特色である機動性を損なうことなく戦況に応じて火力に比重を置いたモードと格闘戦に比重を置いたモードとを使い分けるレオストライカーとして完成を見る。

▲ボルドガルドは、キメラブロックスの圧倒的な攻撃力に対抗するために開発された重武装の支援用ゾイドブロックスだ。その主な任務は、4連装中距離キャノンによる後方からの援護射撃。また、自らの装備をBZ-001~004に与えることで、各機をパワーアップする力をも秘めている。ボルドガルドの参戦で、対キメラの戦いは、さらに激しさを増していく。

▲レオストライカーは、凶悪な力を持つキメラに対抗するために2つの形態を与えられたブロックスだ。アルティメットモードは、高速走行から前脚のザンスマッシャーで敵を引き裂く格闘戦形態。ガンナーモードでは、マルチプルキャノンによる支援攻撃を得意とする銃撃戦仕様。ブロックス特有のチェンジマイズ機能により、極めて短時間で両形態に換装できる。

第2世代キメラ・ブロックス

「Chimera」というコードネームで呼ばれるブロックスは、2種類以上の異なる遺伝子情報から作られたものである。2種類以上の形質を獲得することで高い戦闘能力を持つに至っているが、惑星Ziのどの生命体よりも凶暴な闘争本能は、それ自体が強力な武器となった。
 キメラ・ブロックスの制御コマンドは、ダークスパイナーを介して伝達され、その運用は基本的に「ゴー」「ストップ」「トレース」という3つのコマンドによって成リ立っており、細かい作戦行動をとることができない。そのため、キメラ・ブロックスを用いた作戦は、2大部族間戦争時代に退行していると言っても過言ではない。
 しかし、キメラ・ブロックスにはそうした欠点を差し引いても余りある戦闘力が秘められていたのだ。
 ネオゼネバスでは、敵軍に対して正面からぶつかる力押しの作戦にはキメラ・ブロックスによる部隊を、きめ細かい戦術が必要な作戦では鉄竜騎兵団などの有人ゾイド部隊をという具合に使い分け、共和国軍との戦いを有利に進めていた。
 
 はからずも、キメラ・ブロックスを運用するのに欠かせない存在となったダークスパイナーであるが、広く部隊を展開するには絶対数が足りておらず、急遽開発されたディメトロドンでその不足を補っていた(小規模な部隊などではゲーターを用いることもあったという)。キメラ・ブロックスの運用方法が共和国に露見するようになると、共和国軍では、キメラ・ブロックスと遭遇した際、「その背後にいる電子戦ゾイドをまず撃破し、指揮機とのリンクが切れて帰投モードへと切り替わった状態のキメラ・ブロックスを殲滅する」あるいは、「さらなる電子戦ゾイドを戦線に投入、ニセのコマンドを入力し戦力として無効化する」といった戦術がとられるようになっていった(そのため、共和国軍は前線を退いたゴルドスも、急遽増産配備している)。

▲ロードゲイルの基本形態。その機動性の高さを駆使して接近戦では無類の強さを発揮する。キメラ・ブロックスへの制御信号の出力が弱く、遠距離からのコントロールが効きにくいという欠点があるため、常にキメラ・ブロックスと共に戦場に身を投じておかなかればならない。現状では1体のロードゲイルが一度に制御できるのは最大5体までとされているが、パイロットの熟練度によっては、その数が増えることもあるという。

 ダークスパイナーが統率するキメラ・ブロックス部隊に関しては、ダークスパイナー自体の機体性能の高さから共和国軍に遅れをとることは稀であったが、それ以外の部隊に関しては、簡単に勝利することが難しくなってきたのである。ダークスパイナーの量産化が叫ばれてはいたものの、ネオゼネバスでは国政を安定させるために軍事費の比率を大きくできないという事情もあり、その生産は遅々として進まなかった。
 
 そこで、ブロックスの「統一規格による部品の共有」という概念のもと、開発が進められたキメラ・ブロックス制御用の機体が、初の有人キメラ・ブロックスであるロードゲイルである。キメラ・ブロックスの開発時に「死神」のコードネームで呼ばれた実験機を開発母体とし、各部にキメラ・ブロックスのモジュールを使用できるように再設計されている。つまり、有人制御ユニットまわり以外のパーツを既存のキメラ・ブロックスのパーツで賄うことにより、開発期間の短縮と量産性を高めたのだ。

 コントロールできる個体の数こそダークスパイナーに及ばないものの、最前線において、キメラ・ブロックスを制御できることの戦略的意義は限りなく大きい。これによりネオゼネバス帝国は、戦略・戦術の幅が広がり、キメラ・ブロックスに柔軟な作戦行動をとらせることが可能となった。
 
 どの生物にも属さない形態をもつロードゲイルは、別名「キメラの王」とも呼ばれており、その操縦は、エースパイロットですら乗りこなすのに多大な時間を必要とした。そのため、充分な性能を発揮するまではオートパイロットプログラムの助けを借りる必要があったが、その段階を踏まえた機体はどれも前線において輝かしい戦績を残している。

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