top of page

新しい戦いの時代へ……

 アルダンヌの戦いは、共和国と帝国の戦いの中では小規模なものであった。しかし、この戦いはバラン大尉も感じたように、それまでの戦い方を一変させていた。

 地球人による武装強化で、メカ生体は生体としての扱いより、メカとしての扱いにウェイトが置かれるようになっていた。

 ゼネバス皇帝は、ますます武装強化を図っていき、帝国は、狂気の国へと変わっていく。

 一方、共和国側は、日増しに重装備されていく帝国側のメカ生体を見るにつけ、国家としての危機を悟った。

 ヘリックは直ちに共和国議会を召集し国家緊急法(コードネームX-day)の発令をした。X-dayとは共和国メカを緊急時パワーアップする特別指令の暗号である。
 共和国の主力メカ・ゴジュラス、RBOZ-002(ゾイドマンモス)RBOZ-004(ゴルドス)の装備は最新のレーザー砲につけかえられ、装甲も地球人のアドバイスにより、軽くて、強度の高い超合金に変えられていった。その一方で、未だ試験段階にあった超空のメカRBOZ-005(サラマンダー)の生産指令も同時に出された。 

 神風ジョー

 地球人ジョーの話をしよう。

 彼は「グローバリー三世号」の乗客の中で最年少であった。両親と一緒に旅に出たのだが、不時着時にはぐれ生死さえ定かではない。

 落ち込んでいた彼を励ましたのは、ゴジュラスの操縦にかけては第一人者であるターナー少佐であった。勇敢でメカに精通した少年ジョーはゴジュラスの虜になり、ゴジュラスの戦闘員の資格を得た。所属は第二師団であった。

 改造され強化されたゴジュラスは、全身をレーザー砲やミサイルで包み、軽量化されたことで動きも俊敏になり、戦闘能力は数段増していた。コクピットは地上から20メートルもあり、目もくらむような高さであった。ジョーはミサイルなどによる砲撃戦よりも、ゴジュラスの両腕を活かした、格闘戦が得意であった。

 

 X-day計画発令後、改造第1号のゴジュラスはターナー少佐のはからいで、ジョーが搭乗することになった。

 このゴジュラスで戦場に出た時にも、編隊攻撃の最中に編隊を離れ、レッドホーンの猛攻撃を恐れることなく突撃し両腕で握り潰し、敵陣を大混乱に陥れる大活躍をした。しかし、ターナー少佐からは編隊を無視し味方を危険にさらしたことから、大きなカミナリを落とされた。カミナリを落とした少佐ですら、ジョーの勇気と素晴らしい戦闘能力に舌を巻いていたのだが…。

 この時から、少年ジョーは「神風ジョー」というあだ名を仲間から頂戴した。仲間たちは彼の勇気を讃えたのである。後にジョーはその勇気と戦闘能力で、共和国の子供たちにも憧れのパイロットになっていく。

 

 しかし、ジョーの心のなかには、行方の知れない父と母のことがいつも浮かんでいた。父と母は無事なのだろうか。この星からは地球は見えない。コクピットから空を仰いでも、飛び交う戦闘メカがみえるばかりだ。目を地上に向ければ、そこは荒れ果てた戦場が広がるばかりである。

▲戦闘の合間にコクピットから、遠く、ふるさと地球を思う神風ジョー

bottom of page