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参謀

 ゼネバスは焦っていた。

 せっかく完成したミサイルという新型の地球武器も、それを上回る共和国軍のゾイドによって色褪せてしまった。兄ヘリックはさぞかし自分を笑っていることだろう。そう考えるだけで、無性に腹がたってくる。
 そこへ、共和国の部隊がレッドリバーを越えて移動中という情報が飛び込んできた。 
 ゼネバスは、これぞ千載一遇のチャンスとばかりに全軍を移動しグランドバロス山脈の北端に待ち伏せの陣を敷いた。

 さあ来いヘリック、帝国軍の威信をかけて全軍でお前の軍を叩き潰してやろう…

 ゼネバスは焦る気持ちから冷静な判断力を失っていた。 

 帝国軍が迎撃の陣を敷いていた頃、中央山脈を越えて共和国の軍が最新装備のPBOZ-003(ゾイドゴジュラス)を先頭に雪崩をうつように帝国の首都を目指していた。レッドリバーにまわっているはずの共和国軍の大軍が砂漠を横切り一気に首都に迫ってきた。主力部隊が欠けている首都防衛軍はあっというまに蹴散らされてしまった。ゼネバス皇帝に、緊急通信がうたれたのはもちろんである。
 

 ゼネバスの首都は険しい山城である。切り立った岩や崖が自然の城壁となって、共和国軍の激しい波状攻撃を食い止めてくれる。地上からの攻撃でも、空からの攻撃でもやすやすと落とされることはない。

 

 ゼネバスは、首都からの電信で初めてレッドリバーの敵は囮であり、ヘリックにまんまとはめられたことを知った。首都は激しい砲撃を受け、城壁は崩れ城も大きなダメージを受けたが、主力部隊の戻るまでは耐えた。共和国軍は帝国軍が戻るやいなや深入りせずに軍をひいた。

▲共和国軍の攻撃に大混乱の帝国防衛軍

 ヘリック大統領は、地球人の進言によって、作戦参謀としてブラッドリー将軍をむかえていた。囮作戦をすすめたのは将軍であった。
 
「大統領閣下、これは陽動作戦といいまして、敵の裏を掻くのに効果があります」

 将軍の作戦は、見事に成功した。ヘリックは、将軍の作戦能力を高く評価し、将軍にアドバイスを求め、軍の編成についても近代化をおしすすめる決心をした。 

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