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危機

 中央山脈の最高峰ターボット山の頂に、銀色をした巨大な皿が帝国の首都にむけて建設された。レーダーであった。
 共和国軍の電子探査師団は師団長にブラントンを任じ、このレーダーサイト(基地)の指揮官には、同じ虫族のモーリス少尉があたっていた。少尉はブラントン同様、独特の探査能力を持ち、地球人の開発したレーダーを活用することでその能力は一層みがきがかかった。

 いつものように任務についていたモーリスは、レーダースクリーンに不思議な影をとらえた。モーリスのそれからの行動はすばやかった。RMZ-12ガイサックに飛び乗るや影に向かって発進していた。予感、不吉な予感が働いたのだ。果たして彼の予感は的中していた。 
 砂漠用に迷彩を施したガイサックは、真っ赤な大軍を認めた。
「EPZ-01(レッドホーン)だ、それも重装備に身を固め、見たこともない大軍だ」

 モーリスの暗号通信は、ヘリックのもとに飛んだ。帝国のレッドホーンは、旧式の火器を外し、レーザー砲、ミサイル、ビーム銃など共和国ゾイドと同様のいやそれ以上の装備をフルに装着しているではないか。
 
「いつの間にこんな装備を…」
 敵の情報に明るいモーリスですら、あまりのショックにしばし、呆然としてしまったくらいだった。 

 ヘリック大統領にとっても驚きであった。ゼネバス帝国の首都攻撃の成功と内乱の勃発、ガンビーノの死、などでゼネバス皇帝は当分立ち直れまいと読んだ大統領の誤算であったといえる。

 共和国は、いま最大の危機を迎えている。

▲大地を真っ赤に染めて帝国軍のレッドホーンが突撃する

「重装備に身を固めた見たこともない大軍だ」モーリスは叫んだ。

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