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近代戦術の導入

 戦闘兵器としてのゾイドの特性は、接近戦にあり!と見抜いたランドバリーは、従来の「敵と出くわしたら、とにかく戦う」という、帝国軍のゾイドの使い方を根底から見直した。
 敵、共和国軍のゾイドも、地球人の技術導入により、複合材による強化装甲を身にまとい、対電子戦対応装備を整え、コンピュータ制御による光学兵器を装備するなど加速度的に近代化が進む中、騎士道を基本とした戦い方では敵を打ち負かす事など不可能だと考えていた。

 ランドバリーは、まずそれぞれのゾイドの特性の見極めに着手し、一個師団が、それ全体で一つの生き物として機能するような、最小の犠牲で、敵機動部隊との接触を果たす事を目的とした適材適所のフォーメーション編成を確立した。
 そして、いかに近くに敵弾が着弾しようと、また戦友が負傷しようとも、このフォーメーションは絶対にくずしてはならないと全戦士に徹底した。冷徹にも最前線の機体が、敵の直撃弾を受けて大破しても速度とコースは、絶対に変更しない。その屍を乗り越えて、前進せよ!と命じた。

 それはまるで、ギリシャ時代無敵を誇った"いかなる攻撃にも動じず、敵に接近し、司令官の命令で直ちに散開、接近戦に移行する"「ファランクス陣形」の再来のようであった。
 そして、この陣形の最後尾に従軍する偵察機だけは戦闘に参加せず、戦いの一部始終を記録、次なる戦いの為の戦術データとして回収した。

「商売も、戦争も同じだ。儲かるためのシステムを確立した者、勝利するためのシステムを確立した者が、生き残るのだ」

 彼の思想に美学は無い。しかし、ランドバリーはこの戦法で成功を納めたことによって、単なる武器商人ではなく、ゼネバスに直接意見を言えるまでの立場を得るに至ったのだ。

 かくして、装備のみならず戦術面でも近代化を果たした帝国であったが、この近代戦闘に共和国も追随し戦況は再び拮抗した状態に戻りつつあった。
 勝敗はいかに近代化された装備、戦術を徹底できたかに左右され、勝利した部隊は陣営問わず自らの先進性に自惚れた。

 しかし、近代化しきった部隊同士の戦いがどうなるかを知るものはまだ、誰一人としていなかった。

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