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突き進む破壊の悪魔

ゾイドゴジュラス基地炎上

ZAC2044年

「死の恐竜」が、闇の荒野に立っていた。荷電粒子砲の一撃でプテラス飛行隊を溶けた金属の塊に変え、強力な共和国地上部隊は、鉄屑となって大地に散った。
 残骸の中で魔神のように吼えるデスザウラーを見上げるスケルトン部隊の勇者たちさえ、心の奥にわき起こる恐怖心を抑えることができなかった。

<こいつを敵に回さなくてよかった……>
 ロバット大佐は胸の中で呟いた。
 
 共和国首都へ向けて前進する時が来た。だが、偵察役のカマキリ型ゾイド、ドントレスが厄介な情報を持ち帰って来た。前方の共和国基地にゴジュラスの大部隊が集結しているというのだ。
 予定通りまっすぐ前進するか、遠回りになっても避けて通るか。議論を戦わせるロバット大佐たちの耳に、自信に満ちたダンカン少尉の声が響いた。
 
「まっすぐ突き進みましょう、ロバット大佐。ゴジュラス如きを恐れていては、共和国首都を落とすことはできません」
デスザウラーの「死の行軍」が開始された。

 共和国のパトロール隊から、緊急通信が基地に入った。
「敵の超巨大ゾイド、接近中!」
 
 連絡を受けた基地司令官は通信の内容をすぐに信じることができなかった。
「この司令ビル程もある巨大な敵ゾイドだと?そんな馬鹿な……」

 だが、司令官の戸惑いは直ちに消し飛んだ。司令ビルの窓に、今、連絡を受けたばかりの敵ゾイド、デスザウラーの巨大な頭部が迫っていたのだ。
 
「緊急警報、緊急警報!敵ゾイド襲来!全ゴジュラス出動せよ!」
 
 ベッドからはね起きたゴジュラスのパイロットたちは格納庫へ走った。戦闘服に着替える時間を惜しんでパジャマ姿でヘルメットをかぶる者や、裸足のままでコックピットに飛び込む者もいた。唸りを立てて動き始める何十台ものエンジン。格納庫全体がビリビリと震えだした。シャッターが開くのを待ちきれず、最初のゴジュラスが壁を突き破って外へ飛び出した。
 歴戦の勇者が揃ったゴジュラスパイロットは、自信満々デスザウラーを取り囲んだ。
 
「たった一台でゴジュラス部隊に立ち向かうとは命知らずなやつめ。生け捕りにしてパイロットの顔を見てやろう」
 二台のゴジュラスが、同時に背後からデスザウラーに組みついた。だが、デスザウラーは両腕の一振りで二台のゴジュラスを簡単に弾き飛ばした。そして、正面に迫ったもう一台を軽々と片腕でさし上げると、燃料タンクの上へ放り投げた。たちまち立ち昇る巨大な炎の柱。同士討ちを恐れてビーム砲を発射できぬゴジュラスに向けて、デスザウラーの三連ビーム砲が火を噴いた。

 一台、また一台とゴジュラスは破壊されていった。

 一度浮き足立ったゴジュラスは、デスザウラーの敵ではなかった。今や基地の中で動いているのは、逃げ惑う共和国兵士とデスザウラーだけだった。ついに基地司令官は決断を下した。
 
「全員ただちに基地の外へ避難せよ。敵ゾイドを基地諸共爆破して葬り去れ!」

​不死身の最強ゾイド

 デスザウラーとゴジュラス部隊の戦闘が始まると同時に、ロバット大佐の指揮するスケルトン部隊も基地内へ潜入した。
「敵に発見されぬよう気をつけながら、基地内に散れ。ゴジュラスの動きを全てダンカン少尉に連絡するのだ」
 
 建物の影や屋上に隠れたスケルトン部隊から、基地内を移動するゴジュラスの動きがデスザウラーのコックピットに座るダンカン少尉に伝えられた。
「西より2台のゴジュラス接近中」
「格納庫の影に潜むゴジュラス発見」
「方位224に退避したゴジュラスは現在炎上中。戦闘不能の模様」
 部下の活躍と、ダンカン少尉の落ちついた戦いぶりを見届けると、ロバット大佐はひとり弾薬庫に潜入した。圧倒的な強さを誇るデスザウラーとはいえ、敵の基地に長居は無用だった。弾薬庫に時限発火装置をセットして基地を爆破、その隙に撤退する計画であった。
 だが、弾薬庫に忍び込んだロバット大佐が発見したのは、既に動き始めている自爆装置であった。
「いかん、敵に先を越された」
 ロバットは通信マイクに向けて大声で怒鳴った。
「戦闘を止めてただちに脱出せよ!基地の自爆装置が作動している!」
 
 ロバットはコックピットのレーダースクリーンで、部下たちが猛スピードで基地外へ脱出するのを確認した。だが、ただひとつ、デスザウラーを示す赤い点だけはその場を動こうとせず、やがてスクリーンの上から消えていった。

​ 命からがら脱出した共和国兵士の背中へ、凄まじい光と音が襲いかかった。立ち尽くして見守る兵士たちの前で、基地は見る見るうちに炎に覆われ、最後には巨大な火の玉があらゆるものを飲み尽くしてしまった。

「あの火の玉の下では、何ものも生きてはおれまい」
司令官は崩れるように大地に膝をついた。
「やっと敵を倒すことができた」
 
 誰もがほっと息をついたその時、不気味な地鳴りとともに、大地に地割れが走った。地割れは青い光をまき散らしながら、まっすぐに共和国兵士の足元めがけて突き進んできた。

「何物かが地中を進んでいる」
 
危険を感じた兵士たちが銃を構えた瞬間、ぱっくりと割れた大地から姿を現したのは、不死身の魔神、デスザウラーであった。


 基地を脱出する時間がないと考えたダンカン少尉は、荷電粒子砲で大地に穴を空け、強力な爪を使って地中を掘り進んだのだ。
 またしても、強力な共和国部隊を全滅に追い込んだデスザウラー。もはや、その前進を止めることは不可能のように思われるのだった。

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