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D-DAY

RETURN OF ZENEBAS

ZAC2041年

 大陸に、再び激しい戦雲がたなびきはじめた。

 中央大陸の戦いに敗れ脱出したゼネバス皇帝が、驚異的な新ゾイド軍団をひきつれて帰ってきたのだ。共和国軍の予想に反し、その攻撃地点はバレシア湾だった。それも特殊降下母船を使った空からの奇襲で、同時に海からも上陸する両面作戦だった。


 周到に練られたD-DAY(反撃)作戦はゼネバス皇帝の計画どおりに運んだ。共和国軍の防衛ラインは一瞬にして突破された。

 ゼネバス皇帝の心を支えていたものは「逆襲」の2文字であった。暗黒大陸へと敗走したあの屈辱の日から約1年。皇帝は、D-DAYのこの日のために、復讐の炎を燃えたたせてきたのだ。
 一方、共和国の大統領ヘリック2世も、ゼネバス逆襲の日を全く予測していなかったわけではない。十分覚悟し、そのための防衛ラインも敷き、全軍あげての演習も続けていた。しかし、大統領は2つのミスを犯していた。

 ひとつは、帝国軍の上陸地点を共和国の首都に近いクック湾と読んでいたことであり、もうひとつは、帝国軍新ゾイドの能力を過小評価していたことであった。バレシア湾の北部には、魔の海域・トライアングル・ダラスという自然の防御ラインがあり、ヘリックはここからの上陸はありえないと考えたのであった。
 ゼネバス皇帝は、まったくその逆を考えていた。
「攻めにくい所こそ、一番防御の弱い所だ。それはバレシア湾をおいてない。トライアングル・ダラスなど我々の新ゾイドにとっては、おとなしい湖のようなものだ」
 
 皇帝は、自ら作り上げた新軍団に絶対の自信をもっていた。すでに彼の心のなかには、中央大陸をすべて手中に収めたような、作戦成功の満足感で溢れていた。

D-DAY作戦計画マニュアル

 これは、ゼネバス皇帝が全軍に発令したD-DAY作戦の実行マニュアルである。D-DAYは、単なる上陸作戦ではなく、その目的は中央大陸全体の占領にある。つまり、共和国軍を中央大陸から殲滅することを意味する。しかし、現在明らかにされた作戦はほんの一部にすぎない。皇帝の野望はどこまで遂げられるのか。
 
ゼネバス皇帝発令:各師団司令部宛。本作戦のコード名は「D-DAY」とする。この作戦のマニュアルについては、作戦実行日より72時間前までいっさい開封してはならない。D-DAYの日時については、追って暗号により各司令部に通達するものとする。各師団、兵士諸君の健闘を祈る。
帝国軍皇帝 ゼネバス

作戦指令10号01


作戦名:ホエール・カイザー
攻撃地点:X6度5分 Y3度4分(バレシア湾)
攻撃日時:3月X日 0600時
攻撃主力師団:第一攻撃破壊師団
          海上戦闘師団
          第一航空師団


作戦行動:第一攻撃破壊師団は、0500時、海上にて特殊降下母船(ホエール・カイザー)にディメトロドンを搭載。中央大陸バレシア湾の上空より内陸部へ侵攻し降下。同時にウオディックを中心とした海上戦闘師団は、バレシア湾へ0600時、突入。上陸を敢行する。共和国軍の陸上・海上の両部隊を、水陸両面よりハサミうちの形でこれを殲滅する。攻撃開始から、2時間後0800時、バレシア湾はゼネバス帝国軍の支配下に置くものとする。

作戦指令10号02

作戦名:キャッツ&ドッグ(どしゃぶりのように爆撃する)
攻撃地点:DA8度24分 HC18度12分(中央山脈)
攻撃主力部隊:爆撃航空戦隊
          戦闘航空群
          偵察索敵航空群


作戦行動:中央大陸は、中央山脈とグランドバロス山脈によって東西に二分されている。山脈を管轄に置くことが、今後の作戦の主導権をにぎることとなる。バレシア地区を制圧した師団のうち第一航空師団は、全軍をもって、中央山脈の敵拠点を爆撃する。戦闘航空群は、地上の共和国防衛軍の壊滅にあたること。また、偵察索敵航空群は、高度より敵の防衛ラインを完全に把握せよ。共和国の航空隊が迎撃してくるものと予想されるが、ドッグファイトによってこれを撃破せよ。制空権を握るのが、この初期活動の目的である。
 
①偵察航空群(高々度より敵陣形を偵察)
②第一航空師団爆撃航空戦隊
③戦闘航空群支援活動(共和国航空隊を迎撃する)
④共和国航空隊
⑤第一攻撃破壊師団(陸上より、共和国防衛ラインを破壊する)
⑥共和国防衛軍

作戦指令11号03
 
作戦名:ビッグスチーラーズ(大泥棒)
攻撃地点:AE16度6分 BW8度7分(ウラニスク工業地帯)
攻撃日時:未定
攻撃主力師団:特攻撃破師団
          特殊工作隊
          特殊潜攻隊


作戦行動:第二攻撃目標は、ウラニスク工業地帯である。戦闘の継続を可能にするのは物資の補給を確実にすることである。そのためにはこの工業地帯を征することが絶対条件といえる。またただちに、新メカの生産にとりかかる必要があり、攻撃目標は破壊せずに確保しなければならない。バレシア湾の奇襲によって浮き足立つ共和国の防衛軍に、態勢を立て直すスキを与えずに攻撃をくわえるため、特攻撃破師団はレッドホーンを中心にすみやかに行動作戦を完了しなければならない。作戦完了は、1200時とする。

作戦指令11号04
 
作戦名:ブーメラン(帰還)
攻撃地点:G26度0分 F13度2分(ゼネバス城)
攻撃主力師団:突撃混成師団
          特攻撃破師団


作戦行動:第一期作戦の最終目的は、われらの城に自ら帰還することである。キャッツ&ドッグ作戦は、敵の支援を断ち切り、ゼネバス城奪還作戦を成功に導くためのものである。制空権を握っているために、陸上軍を中心とした攻撃にする。砲撃による城の破損を極力避け、敵軍の勇気ある投降を期待する。ゼネバス城は皇軍のシンボルであり、心のふるさとである。城の奪還なくして作戦の終了はない。なお、ブーメラン作戦の総指揮は、ゼネバス皇帝自らが執る。

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