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仮面騎士団の恐るべき罠

デスザウラー待ち伏せ作戦

ZAC2044年

 共和国軍の奇襲攻撃を避けて、研究所を脱出したダンカン少尉が辿り着いた場所は、国境近くに秘かに編成された特殊部隊の基地であった。
 帝国特殊部隊「スケルトン(骸骨)」

 この不気味な暗号名を持つ部隊の存在を知る者は、帝国軍の中の一握りの将軍たちだけであった。

 基地でダンカン少尉を出迎えたのは、なんとゼネバス皇帝その人であった。
「元気だったかね、ダンカン少尉。紹介しよう、『骸骨(スケルトン)』の面々だ。もちろん、まだ生きているがね」

 ダンカン少尉は目を丸くして、居並ぶ軍人たちを眺めた。帝国軍兵士なら誰でも知っている歴戦の勇者たちが綺羅星のように並んでいたのだ。その中のひとりがダンカン少尉に歩み寄ると手を差し伸べた。バーナム川の闘いで、コング部隊を率いて共和国軍を撃ち破ったロバット中佐であった。
「お待ちしていました。ダンカン隊長」


 驚くダンカン少尉の耳に、ゼネバスの声が響きわたった。
「今日から君が彼らの隊長だ。ダンカン少尉。新型ゾイド、デスザウラーに乗って共和国首都へ向かうのだ」
 運命の女神は、年若き少尉、トビー・ダンカンを、戦いの中心に座らせようとしていた。

ついに現れた帝国最強ゾイド

 朝霧に包まれた共和国空軍基地。翼を休めるプテラス飛行隊の向こうに、見慣れぬ小型ゾイドの一団が現れた。

「味方のブルーパイレーツだろうか?」
 守備隊の兵士がゆっくりと近づきかけた時、小型ゾイドのビーム砲が火を噴いた。帝国軍の特殊部隊「スケルトン」の奇襲攻撃だ。

 スケルトン部隊には、レーダーの電波を吸い取る特殊な改造がされていたため、基地のレーダーも役に立たなかった。不意を突かれた共和国軍守備隊が大混乱に陥ったのを見届けると、サソリ型ゾイド、デスピオンは信号弾を打ち上げた。

「信号弾が上がったぞ、第二波攻撃開始!」
 
 滑走路の端から霧のベールを裂いて、ロバット中佐の指揮するダチョウ型高速ゾイド、ロードスキッパーの一団が突撃をかけた。

 中世の騎士のように長い剣や槍を振りかざし、猛スピードでプテラスの間を駆け抜ける。振り下ろされた剣が、霧の中で稲妻のように光るたびに、プテラスの翼やコックピットが宙に飛んだ。

 巨大ゾイド、デスザウラーと、一人乗りのミニゾイド、スケルトン部隊。このまったく性格の異なる2種類のゾイドこそ、共和国首都攻略のためのゼネバス皇帝の秘密兵器であった。


 6年前、共和国の平原へ大軍を進めながら、ゼネバスは共和国首都を落とすことができなかった。長い雨期が平原を泥沼に変え、帝国軍が泥の中で立ち往生する間に、ヘリック大統領の率いる共和国軍が海を渡って帝国領土に攻め入ったのだった。
 6年前の失敗を繰り返さぬように、雨期が来る前に共和国首都を落とす。そのためには、素早い進撃が必要だった。動きが遅く発見されやすい大軍ではなく、敵陣地の隙間を槍のようなスピードで突き進む、強力なゾイドによる単独攻撃。デスザウラー開発の最大の理由はここにあった。
 そして、そのデスザウラーの手足となって偵察、補給、連絡、護衛の任務にあたるのが、帝国軍の精鋭を選りすぐって編成したスケルトン部隊であった。


 秘密兵器、スケルトン部隊は、すでに矢のように共和国軍に撃ちこまれた。そして第二の矢、デスザウラーが、出撃の時を今や遅しと待ち構えているのだった。

 暴れるだけ暴れると、スケルトン部隊は風のように退却していった。散々な目に会わされた共和国軍は、怒りに燃えて追跡に移った。生き残ったプテラスが次々に大空に出撃していった。15分後、基地の無線機がプテラスの通信をとらえた。
 
「敵部隊発見、全機攻撃を開始せよ」

 だが、この通信を最後に、基地のレーダースクリーンからプテラスの姿が消えた。大慌てで派遣された地上部隊が現場で見たのは、どろどろに溶けたプテラスの残骸だった。

「完全武装の飛行ゾイドを一撃で倒すとは…!」
 
 息を呑んで立ち竦む共和国軍。その時、深い闇の中から巨大ゾイド、デスザウラーがついに姿を現した。逃げ惑う共和国軍をアリのように踏みつぶして、「死の恐竜」は共和国首都へ向けて前進を開始した。

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