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敵地のまっただ中で

コマンド部隊「ブルーパイレーツ」の戦い

ZAC2041年

 バレシア湾に上陸した帝国軍が暗黒大陸から持ち帰った新型ゾイドの性能は、共和国軍の予想を遥かに上回るものであった。
 魚型ゾイド、ウオディックは、考えられぬ深海から魚雷攻撃をしかけて来た。いかなる共和国水上ゾイドも、反撃どころかウオディックが浮上しないかぎり、発見することさえできなかった。

 ディメトロドンの電波攻撃のために、共和国軍はレーダーも無線も使えなかった。いわば、目と耳と口を奪われたのだ。
 クジラ型ゾイド、ホエールカイザーは、何台もの大型ゾイドと何百人もの武装した兵士を、旧帝国領土のどこへでも素早く、しかも音もなく運ぶことができた。夜の間に前線から何百kmも入った敵地へ大軍を送ることができるのだ。
 
 ウルトラザウルスの力をもってしても、帝国軍の進撃を止めることはできなかった。帝国軍は、帝国全土で共和国軍を追い散らし、帝国首都を奪い返し、ついに中央山脈の東へ共和国軍を叩き出した。帝国は二年ぶりにゼネバス皇帝の手に戻ったのである。
 
 しかし、帝国領土内の国境地帯に踏み止まって、圧倒的に優勢な帝国の大軍を相手に戦いを挑む、いくつかの共和国コマンド部隊がいた。彼らは、特別に開発された超小型ゾイドを馬のように自由自在に乗りこなした。
 カンガルー型のショットダイル、鳥型のキャノッサ、カマキリ型のカマキラー、カブトガニ型のシーバトラスに乗って、彼らは国境地帯の帝国軍を悩ませ続けた。
 強者ぞろいのコマンド部隊の中で、とりわけ有名だったのが、「ドクロ岩」に砦を置く「ブルーパイレーツ」、青い海賊と呼ばれる部隊だった。

 風のように現れて、帝国軍をきりきり舞いさせるブルーパイレーツ。山岳地帯や森林の中で彼らに敵う者はなく、国境地帯の山へ進軍することを帝国兵士はひどく恐れていた。
 帝国軍の総力を集めても、彼らの隠れ家を見つけることはできなかった。

 帝国軍の新型ゾイド、シーパンツァーが国境近くの帝国基地へ運び込まれた。
 これを嗅ぎつけたブルーパイレーツは、帝国基地を奇襲攻撃。まんまとシーパンツァーを盗み出した。

 だが、秘密基地「ドクロ岩」に戻ったブルーパイレーツを待ちかまえていたのは、大型ゾイド、レッドホーンを中心にした帝国の大軍だった。盗み出したシーパンツァーの中に発信機が隠されていたのだ。

「油断したな、ブルーパイレーツ。お前たちは完全に包囲された。諦めて降伏しろ」
 
 帝国軍がじりじりとブルーパイレーツにせまって来た。

 その時、ドクロ岩の中から、共和国軍のクワガタゾイド、ダブルソーダーが飛び出してきた。 不意をつかれた帝国軍の上に、煙幕弾が降り注がれた。たちまち辺りは一寸先も見えなくなった。ブルーパイレーツはまんまと包囲網を脱出した。

「やつらを逃がすな」

 レッドホーンが地響きを立てて、パイレーツを追う。
 だが、怒りに我を忘れた帝国軍は、あらかじめパイレーツが作ってあった底無し沼におびき寄せられ、大部分のゾイドが泥の中に沈んでいった

 次々と罠に落ちていく帝国ゾイド。


「このままでは全滅だ。退却しろ」
 しかし、生き残った最後のレッドホーンも、ダブルソーダーに橋を破壊されて、谷底へ落ちて行った。

「この隠れ家も、もう使えない。共和国へ帰るぞ」 
 帝国の大軍を打ち負かしたブルーパイレーツは、シーパンツァーを土産に堂々と共和国へ帰って行った。

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