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駆け抜ける青い影

超高速戦闘部隊シールドライガー誕生

ZAC2042年

 バレシア基地脱出戦でのサーベルタイガーの活躍は、戦火を交えた共和国兵士の間に、忘れられぬ思い出を刻みこんだ。"空の王者"サラマンダー飛行隊を叩き伏せ、ウルトラザウルスの大部隊を相手に一歩も譲らぬ戦いを挑んだ姿は、共和国の兵士から兵士へ語り継がれた。

 サーベルタイガーに注目したのは、一般兵士だけではなかった。バレシア基地で大量のサーベルタイガーを捕獲した共和国軍司令部は、その優秀な性能に改めて驚きの声を上げた。ただちに研究班が結成され、サーベルタイガーを超える超高速攻撃ゾイドの開発が開始された。
 その研究の中心に、エリクソン大佐の姿があった。
 
 エリクソン大佐の手によってサーベルタイガーは徹底的に分析され、研究成果のすべてが、新型ゾイドに注ぎ込まれた。そして、ついに完成したのが、青いライオン型高速ゾイド「シールドライガー」であった。
 自ら作り上げた一号機のコックピットに座りながら、エリクソン大佐は、バレシア基地での戦いを思い起こしていた。
 負けると知っていながら、共和国の大軍に立ち向かって来たサーベルタイガーの群れ。そして、エリクソンのキャノン砲の前に自らの体と命を投げ出して、ゼネバスの脱出を助けた「タイガー」・ダンカン将軍……。
 
「彼らの勇気を、私にもお与えください」
 エリクソン大佐は小声で祈りをあげると、シールドライガーのエンジンをスタートさせた。国境を越えた帝国軍が共和国の防御線へ迫っていた。シールドライガーの初めての戦いが始まるのである。

ハドリアンウォール突破作戦

 空を覆い隠すほどのシンカーの大編隊が、共和国防御線の一角に何百トンもの爆弾を浴びせ続けた。防御線に穴をあけ、一気に地上軍を侵入させる作戦なのだ。

 

 高さ20m、厚み5mの石の壁も、ついに崩れ始めた。

 崩れ落ちる瓦礫を突き破って、帝国軍の重戦車、ブラックライモスが突撃をかけた。

 

 ライモスの角がゴドスの体を抉り、蹄が陣地を踏みにじる。それを追って、サーベル、ヘルキャットの高速部隊がなだれのように押し入った。

 共和国奥深く進出した帝国軍。だが、迎え撃つはずの共和国部隊はどこにも見えなかった。 
 
「気をつけろ。罠かもしれん」
 隊長のサーベルタイガーがそう言った瞬間、突然真っ白いオオカミ型ゾイドがヘルキャットに襲いかかった。
 帝国軍を待ち伏せていた共和国メカ、コマンドウルフである。

​ コマンドウルフの奇襲攻撃で、帝国軍の進攻作戦は狂い始めていた。

 そもそも、この作戦は四つの段階に分かれていた。
①シンカーの爆撃で共和国防御線に「穴」をあける。
②ブラックライモスが「穴」を守る。
③「穴」を通って、サーベル、ヘルキャットの高速部隊が共和国奥深く侵入する。
④レッドホーン、アイアンコングの大型ゾイドが続いて侵入し、高速部隊の背後を守る。
 だが、侵入した帝国部隊を待ち構えていたのは、エリクソン大佐の計画した大胆な罠であった。

 共和国防御陣にわざと「隙」を作り、そこから帝国軍を侵入させる。その後、南北から大軍を送って防御線の「穴」をぴしゃりと塞いでしまう。こうすれば、共和国に進入した帝国部隊は袋のネズミだ。あとはどうとでも料理できる。そして、彼の作戦の中心になるのが、対サーベルタイガー用に開発した超高速ゾイド、シールドライガーであった。
 ヘルキャットを散々な目にあわせると、コマンドウルフはさっさと退却を始めた。

「おのれ!逃がすものか」
 怒りに燃えて全速力であとを追うサーベルタイガー。しかしその時、サーベルタイガーのレーダーに、超高速で接近する正体不明の物体が映った。
 
「サーベルタイガーより速い敵ゾイドがいるのか!?」

 驚いて振り返るサーベルタイガーの頭上を軽々と飛び越えて、エリクソン大佐の乗るシールドライガーが現れた。大慌てでビーム砲を乱射するサーベルタイガー。しかし、シールドライガーは軽く攻撃をかわしていく。

 

「なんてスピードだ。サーベルタイガーが、止まっているように見えるぞ」


 エリクソン大佐は自ら驚きの声を上げた。そして、楽々とサーベルタイガーの背後にまわると全身の砲を発射してサーベルタイガーを吹き飛ばした。
 新鋭メカ、シールドライガーは、期待通りの強さを証明したのである。

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