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銀河系内の読者諸君へ

R・S・トーマス

▲中央大陸地図

 ZAC2038年に私が書いた一冊目のゾイド戦史「ゾイドバトルストーリー」は、幸運にも多くの方々に読んでいただき、熱心な読者から何通ものお手紙を頂戴した。そのうちの一通は、名高い宇宙言語学者、ヘーゼルハースト博士からのもので、博士は私の本を他の惑星言語に翻訳するよう勧めてくださった。私にとっては、夢のような話であり反対する理由などどこにもない。こうして、ヘーゼルハースト博士の力で、「ゾイドバトルストーリー」は、太陽系第三惑星をはじめ幾つかの星々の人にも読んでいただけることとなった。
 
「ゾイドバトルストーリー」を書いていた当時、私は共和国陸軍の大尉で、カノントータス大隊を率いて帝国首都包囲戦へ向かうところであった。行軍の合間の時間をぬすむようにして原稿を書き進め、最後の原稿を書き終えたのは、包囲戦の前夜、帝国首都直前の野戦テントの中であった。次の日、書き終えたばかりの原稿を、共和国へ帰るプテラスのパイロットに預けて、私はあのゾイド戦史に残る激戦、帝国首都包囲戦に参加した。戦いの結果は――この本の第三章に書いた通り、新たな戦い、つらく長い戦いの始まりであった。
 
 共和国帝国両軍にとって、第二次ゾイド戦役の始まりともいえるこの日が、私の軍人最後の日となった。王宮前の戦いで私の乗るカノントータスは、王宮を守る帝国軍親衛隊の激しい砲撃を浴びて炎上、脱出した私は左足に重傷を負った。名誉の負傷と引き換えに、私は野戦指揮官の夢を捨て、ひとりの戦史研究家としてゾイド戦役に参加することになったのである。
 
 一冊目の本、「ゾイドバトルストーリー」を、私は新型ゾイド開発の歴史の面から書き進めた。無敵の王者、ゾイドゴジュラス。その王座を奪ったアイアンコング。高速ゾイド、サーベルタイガーの参戦。共和国の運命をかけて開発されたウルトラザウルス。そして、あの悲劇の天オ、コマンド・"エコー"がウルトラを撃破するために命をかけて開発したアイアンコングMK-Ⅱ。そのコマンド・"エコー"を、大氷原のブリザードの中に撃ち倒したゾイドゴジュラスMK-Ⅱ。
 これらの歴戦のゾイドメカの影に、夜も休まず開発を続けた科学者や技術者、命をかけて戦ったパイロットたちがいたことは言うまでもない。華々しい戦いの裏側て、これらの人々が何を思い、どのように行動したのか。どのように生きのびていったのか。また、どのような思いで倒れていったのか。そのことを私は、この二冊目の本で書くことができればと考える。
「ゾイドバトルストーリー②」は二人の軍人の物語である。共和国軍人、エリクソン大佐と、帝国軍人、トビー・ダンカン少尉の戦いの記録である。この惨たらしい戦争さえ無かったなら、国境を越え、年齢の差を越えて友人となったかも知れぬ二人の男。運命の定めるままに、自らの責任を忠実に果たした、勇気ある二人の軍人の物語に、しばらくお付き合い願いたい。


―ZAC2046年、北国の移動研究所にて―

▲帝国軍少尉 トビー・ダンカン

▲共和国軍大佐 ヨハン・エリクソン

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