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謎の超巨大ゾイド

シールドライガー奇襲作戦

ZAC2043年

 ZAC2043年、共和国の運命を大きく変える事件が起きた。
 事件は一台のトラックから始まった。共和国コマンド部隊「ブルーパイレーツ」が襲撃した帝国軍トラックに、これまでにない巨大なゾイドの部品が積まれていたのだ。

「これは、ただの部品じゃないぞ」
 事の重大さに気づいた「ブルーパイレーツ」の隊長は、事件を共和国軍司令部に報告した。 


 ただちに調査団が現地に送り込まれ、夜も眠らぬ徹底的な調査が行われた。帝国軍がトラックの襲撃に気づく前に、部品の正体を割り出さなければならないのだ。

 襲撃したトラックの30km四方は、すべての部隊の立ち入りが禁止された。もちろん、敵の帝国部隊の接近を防ぐために、最強の部隊が守りについた。全ては、最高の秘密のうちに進められた。
 巨大パーツを発見した砂漠のど真ん中に、最新鋭の高速コンピューターが持ち込まれた。謎の部品の形、大きさ、材料の金属の種類、その他あらゆるデーターがコンピュータにインプットされ、謎のゾイドの完成図が推理された。
 コンピュータがはじき出したのは、ゾイドゴジュラスをはるかに超える、恐竜型巨大ゾイドの姿だった。

 共和国司令部は驚きと恐れに包まれた。シールドライガーとコマンドウルフの活躍で、帝国軍の猛攻を何とか押し留めているというのに、この上強力な新型ゾイドの攻撃を受ければ、共和国軍は総崩れになってしまうだろう。 
 
「どんなことがあっても、この巨大ゾイドを完成させてはならん」

 共和国軍の秘密作戦が発動された。襲撃を受けたトラックは元通りに修理され、攻撃の跡は綺麗に拭われた。共和国軍しか受信できない特殊電波を発する小型発信機が、トラックの中に隠された。あとは帝国軍が、行方不明のこのトラックを発見するのを待つだけだった。
 
 二日後、共和国軍の高性能アンテナが、国境の向こうから発信される特殊電波を捉えた。発信地点は、帝国の都市、ダリオス市の北方100km、帝国軍の研究所が建設された場所である。そこに、謎の敵ゾイドが潜んでいるはずだった。

「敵の研究所に奇襲部隊を派遣し、巨大ゾイドを破壊するのだ」
 
 エリクソン大佐の指揮する「高速機動戦隊」に出動命令が下された。敵地奥深くへ侵入する、危険で困難な任務である。シールドライガーとコマンドウルフの一群は、夜の闇に身を隠して中央山脈を越えて行った。

 他のゾイドでは近づくこともできない険しい山岳地帯を駆け進む、シールドライガーとコマンドウルフ。夜通し駆け続けた共和国部隊は、夜明け前にエネルギーの補給地点に到着した。しかし、そこにはディメトロドンの帝国軍パトロール部隊が……。

 

「我われの作戦を連絡されては面倒だ。一撃で全滅させろ」
 通信電波を邪魔するチャフ(銀紙)が大量に夜空にまかれた。と同時に、シールドライガーとコマンドウルフが一斉に動き始めた。猛烈なスピードで接近しながら、エリクソン大佐の優秀な部下たちは物音ひとつ立てずに襲いかかった。ディメトロドンは、反撃する間も無く闇の中に沈んでいった。

残された巨大な足跡

 エリクソン大佐が補給地点でサラマンダーの到着を待っているころ、彼が攻撃する予定の研究所では、トビー・ダンカン少尉が司令官に出頭を命じられていた。


「ダンカン少尉、この研究所の西にいたディメトロドン部隊との通信が途絶えた。敵の襲撃を受けたのかもしれん。もしそうなら、おそらく敵の狙いはこの研究所だろう」
「私に出撃させてください。新型ゾイドに乗って、敵を蹴散らしてご覧に入れます」
 司令官は、意気込むダンカン少尉の肩に手を置いた。
「トビー、君にはもっと大切な任務がある。敵の奇襲部隊など相手にするな。よく聞け、今や君は帝国一のパイロット『トップハンター』であり、新型ゾイドは我が軍の勝利の切り札なのだ」
 司令官は、厳しい声で命令を伝えた。

「トビー・ダンカン少尉。直ちに新型ゾイドに乗って、特殊部隊『スケルトン』と合流せよ。君の最終攻撃地点はここだ」
 
 地図の上に司令官が指さした場所は、国境の彼方、共和国の首都であった。ダンカン少尉は地図をにらんだ。

 共和国首都!そこへ行けば必ずあのEのマークをつけたウルトラザウルスがいるに違いない!!

 

 ダンカン少尉は目を輝かせて敬礼を返した。彼の探し求めている兄の仇が、数時間後にこの研究所を襲うとも知らず。

 夜明けとともに、輸送タイプに改造したサラマンダーが飛んで来た。猛烈な砂煙を巻き上げながら、奇襲部隊の上空にピタリと停止すると、太いパイプから強化エネルギーを送り込んだ。

 両軍を通じて初めての空中補給作戦である。

 補給を受けたエリクソン大佐の部隊は、猛烈な勢いで帝国の研究所に襲いかかった。

「敵の守備隊に構うな。研究所に突入して、敵の新型ゾイドを見つけ出すんだ」

 だが、共和国部隊の奇襲をあらかじめ予測していた帝国軍は、固い防御線を張ってエリクソンたちが研究所に接近することを許さなかった。

「敵のゾイドは俺に任せろ。早く早く研究所へ」


 エリクソン大佐がアイアンコングを叩き伏せた時、爆発音とともに大地が大揺れに揺れた。 呆然と見上げるコマンドウルフ。ついに帝国守備隊は、巨大ゾイドの秘密を守るために、自分たちの手で研究所を爆破してしまったのだった。

 何もかも吹き飛んでしまった研究所の焼け跡には、敵ゾイドの巨大な足跡だけが残っていた。
 
「今度もまた、取り逃がしてしまったな」
エリクソンの胸に、帝国首都とバレシア基地での苦い思い出が蘇ってきた。
「任務終了、全員撤退せよ」
 
エリクソンは、力なく命令した。

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