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敵地への脱出

ウルトラザウルス脱出作戦

ZAC2038年

 ZAC2038年、両国の国境線上を流れるバーナム川近くの共和国無線基地が、帝国軍の精鋭に突如包囲された。帝国軍の死にもの狂いの大進攻作戦が開始されたのだ。

 帝国領土に突き出した「オームのくちばし地区」と呼ばれる国境地域に設置されたこの基地は、帝国側の無線をキャッチして情報を得るのが任務であった。

 そのため、最新の通信機器と技術者が送りこまれ、共和国軍の通信に関する機密書類も多かった。それらすべてを無傷のまま手に入れるのが、帝国軍の狙いであった。
 
 作戦決行日は、嵐の吹き荒れる夜明けが選ばれた。まず、シンカー部隊がバーナム川を渡り、共和国の援軍に備えた。その後、コング、サーベルタイガー、レッドホーンの各部隊が三方から基地に突入し、抵抗の暇を与えず占領しようというのである。
 
 帝国軍の情報では、基地に所属するゾイド乗組員はわずかに十数名。その人数で動かせる戦闘ゾイドは十台以下にすぎなかった。
 だが、この情報は、半分は正しく半分は誤っていた。乗組員の人数は正確であったが、彼ら全員が乗る戦闘ゾイドはたった一台であった。超巨大ゾイド、ウルトラザウルスである。

 帝国軍の包囲に気づいた共和国軍は、秘かに脱出を開始した。基地の人間全員がウルトラに乗りこみ、敵の裏をかいて帝国側へ脱出したのである。
 息をひそめて川を渡るウルトラのすぐそばを、先陣役のサーベルタイガー部隊が基地に向って走りこんだ。

 包囲網を脱出したウルトラは、基地に向ってキャノン砲を発射。重要機密もろともサーベル部隊を葬り去った。
 だが、国境へ向けて全速で逃げるウルトラを、帝国軍が激しく追撃した。

 国境を目前にして、ついにウルトラは捕捉された。
 帝国軍はじりじりと包囲の輪を狭めていった。

 その時突然、ウルトラの体が真っ白に輝き始めた。危険を察知したコングが身をひるがえした瞬間、ウルトラの全砲門が火をふいた。

 最後の切り札、全方位攻撃である。
 
 炎と煙が消え去った後、クレーター状にえぐれた大地には、どろどろに溶けた帝国ゾイドの残骸が散らばっていた。
 捨て身の脱出は成功したのである。

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