父子
英雄 ケンドール
ZAC2035年
共和国軍の第一師団の師団長はアイザック少将であった。 そして、この第一師団は第一から第十二大隊に分かれ戦闘師団としては最大規模であった。
各大隊の主力ゾイドは勿論ゴジュラスであったが、マンモスやゴルドスも装備を近代化し所属していた。
中央山脈のほぼ真ん中に、一年中雪のとけることのない白い山があり、星人はホワイトロック(白い岩)と呼んでいた。
▲アイザック少将
共和国軍第一師団を率いる将軍
アイザック少将は、このホワイトロックが帝国軍との決戦場になることを知った時、ホワイトロックは真っ赤な血で染まりブラッドロック(血ぞめの岩)になるだろう、と部下たちを気づかった。(ブラッドロックの戦いはここから命名された。)そして、第七大隊を指揮する、息子のアイザックジュニア、ケンドール(ヘリック大統領が名づけ親)中尉の身を案じた。
若いケンドールは、共和国に士官学校ができて第一期の卒業生であり、今までに武勲も少なくなく優秀な指揮官として部下の尊敬を集めていた。しかし、今度の戦いは、天下分目の激戦が予想される。 ケンドールの若い血が騒いでいるぶんアイザックの心は父親として穏やかではなかった。
不幸にして父の予想は当たった。
▲アイザックの息子、ケンドールは、重症を負いながらも、敵の指揮官機に一騎打ちを挑んだ。
ブラッドロックの戦役の中でも激戦中の激戦といわれた作戦「血の6月」(ZAC2036.6)の行動中、ケンドールはレッドホーンを5機撃破。本人もゴジュラスのコクピットで敵のレーザー砲を浴び重傷を負った。
しかし、帝国軍の指揮官機を発見するや、重傷の身を顧みず、一騎打ちに出たのだ。
ケンドールは勝った、がその凄惨なケンドール機の姿に敵も味方も一瞬言葉を失った。そして、次の瞬間どちらからともなく勇者をたたえる歓声があがった。
ケンドールはコクピットで眠るように24歳の生涯を閉じていた。
師団本部で悲報を聞いたとき、アイザックは息子は最後まで勇敢であったか?とのみ部下に尋ねた。 戦いは、いつも悲しみだけしか残さないものだ。
歴戦の勇士アイザックも愛児を失った一人の年老いた父親にすぎなかった。