空から降り立った黒い大王
ギル・ベイダー登場
ZAC2053年10月
共和国軍が暗黒大陸に上陸して、一年以上が過ぎた。
"最終兵器"を捜索しつつ、暗黒大陸の奥へ奥へと苦しい進撃が続いていた。だが、"最終兵器"に関するめぼしい情報はほとんど得られぬまま、時が過ぎていった。
「最終兵器など、暗黒軍のこけおどしにすぎんさ」
そんなことを言い出す士官もいるほどであった。
クルーガはその日、新飛行ゾイドのテストパイロットとして新しい任務につくため、中央大陸行きの定期便に搭乗していた。窓の下には、夜明け真近の黒々とした暗黒大陸が横たわっていた。
眠ろうとした時、彼は、地平線すれすれに不吉な白い糸を引いて、巨大な流れ星が通過するのを見た。
クルーガが暗黒大陸を後にした日の午前4時、共和国軍の最前線基地が暗黒軍に襲われた。ジーク・ドーベル、ガル・タイガーを中心とした高速部隊である。
暗黒軍は、基地の司令部であるタートルシップを遠まきに包囲。何かを待っているかのようであった。
突然、基地周辺が真昼のように明るくなった。暗黒軍と交戦中の共和国軍兵士たちは光の方向を見上げると、声にならない悲鳴をあげ、その揚に棒立ちとなった。
巨大な隕石が、天空から彼らに迫りつつあった。
轟音が、辺りの砲声を一瞬飲み尽くした。隕石は、まるで意志を持っているかのようにタートルシップを直撃。タートルシップはみるみる炎に包まれ、崩れ落ちていった。
「緊急脱出!船内の動けるゾイドは、各自、船外退去せよ」
ほとんど悲鳴に近い指令も、やがて船内各所で起きた誘爆の音にかき消されていった。
炎に包まれたタートルシップから命からがら脱出した共和国ゾイドに、待機していた暗黒軍が一斉に襲いかかった。
炎に包まれたタートルシップから命からがら脱出した共和国ゾイドに、待機していた暗黒軍が一斉に襲いかかった。
ガル・タイガーはジャイロクラフターで縦横に飛びまわり、十分な攻撃態勢もとれない共和国ゾイドを、次々に血祭りにあげていった。
「まさに地獄絵だぜ、こいつは…」
カノンフォート部隊のロジャース少佐は、ガル・タイガーの小型荷電粒子砲を必死でかわしながら、吐き捨てるようにつぶやいた。
そして、機首を巡らした時、少佐は生きながらにして、本当の地獄を見たのである。
落下した隕石が、突然砕け散り、巨大な黒い影が現れた。これこそ、暗黒軍の"最終兵器"ギル・ベイダーの姿であった。
「こちらロジャース。敵巨大ゾイドに遭遇」
司令部への緊急通信は、そこでプツリと途絶えた。