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エピローグ

 ヘリック共和国首都陥落から3年近い時が流れたZAC2104年末。すでに中央大陸のほぼ全域が、ネオゼネバスの支配下に置かれていた。その戦力は日々増強され、共和国軍残存部隊は、わずかにゲリラ戦で抵抗するにとどまっていた。
 旧ヘリック領の民衆たちも、次第に現実を受け入れはじめていた。いつの日か、ネオゼネバスを憎むガイロス帝国の中央大陸侵攻が始まるだろう。その時民衆を守れるのは、皮肉にもネオゼネバスだけだったからだ。帝国の統治が、盤石になろうとしていた。だが…。
 
 共和国軍は、まだ死んではいなかった。大陸中央部の山岳地帯。雪と天然の要害に守られた共和国軍の反乱拠点で、絶望的な状況を一変し得る、全く新しいゾイドが生まれようとしていた。キャムフォード大統領が遺したディスクを元に開発された、ゴジュラスギガであった。
 急ピッチで組み上げられていくギガの巨体。傍らに、作業を見つめる一人の士官がいた。トミー・パリス大尉。守るべきものを失い続けてきた男だった。
 
「敗北は終わりではなく、新たな戦いの始まり…」
 
 パリスは、大統領のメッセージを小さく繰り返した。今では彼は、大統領の最期が事故であったことを確信している。自ら命を絶とうとする者が、こんな言葉を遺すはずがない。
 そして彼は、来るべき新たな戦いに想いを馳せる。失ったものを、その手に取り戻すための戦いに…。

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