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陰謀

ZAC2101年9月 ニクス大陸 帝都ヴァルハラ

 プロイツェンは、すでにタイムスケジュールを前倒しする決心を固めていた。共和国軍に対して、総攻撃に出るのだ。
 本来の計画では、両国の国力をすり減らす消耗戦に持ち込み、その間に増強した鉄竜騎兵団をもって両軍を撃滅するはずだった。そのために鉄竜騎兵団の一部を使い、敵味方の双方を襲い、戦力バランスをとってきたのだ。
 
「だが、そう何もかもがうまくいくと思うほど楽観主義者ではないよ、私は」
 プロイツェンは、側近に微笑みかけた。
 シュタウフィンからの報告は、まだ入っていない。だが、シュバルツ暗殺に成功しようがしまいが、彼の野望が公になるのは時間の問題だった。そうなる前に、両軍の戦力をできる限り削る。
 彼は、鉄竜騎兵団のために送るはずの完成したばかりの虎の子、デスザウラー大隊50機を国防軍に譲り渡した。同時に、全帝国予備戦力に動員をかけた。それは帝都ヴァルハラでさえ、わずかな皇帝警護隊とPK師団、そしてプロイツェン用に造られたブラッディデスザウラー以外は残らず出撃という徹底的な動員ぶりだった。
 
「あとは、これでも追いつかない分の"つじつま"を合わせる準備をするだけだ」
 
 もう一度、プロイツェンは側近に笑顔を向けた。その「つじつま」が何なのかを知る側近は、ただ黙って深く頷いた。
 2年余りに渡って繰り広げられてきたヘリック共和国とガイロス帝国の戦いは、今終幕を迎えようとしていた。

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