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閃光師団VS鉄竜騎兵団!!

ZAC2101年8月 ニクス大陸ウィグリド平原

▲戦略上、必要とは思えない場所に建造された謎のゾイド部隊の基地。ここに隠された秘密とは?

 シャドーフォックスが発見した基地は、戦略上は捨てておいていいものだ。だが、奴らが鉄竜騎兵団なら、その目的を確かめておかねばならない。敵なのか、味方なのかも。
 閃光師団全機に出撃命令が下った。先陣を切るのは、やはりレイだ。誰よりも速く駆けながら、今日に限って愛機の動きが遅く感じられる。

――走れ、ゼロ! もっと速く!

 シャドーフォックスは、謎の部隊の主力機がティラノ型だと報告してきている。
――奴だ。
 その確信があった。あのニクシー基地の戦いから10か月。死んでいった部下への想いと、不吉な死の予感にケリをつける時がきたのだ。
 謎の部隊が、味方であるはずがない。レイとティラノのパイロットは、戦う運命のもとに出会ったのだから。
 基地が見えた。そう思った瞬間、大地が割れた。巨大なドリルだ。高速回転しながら、ゼロの喉笛を襲う。

シャドーフォックスの報告を受け、真っ先に飛び出したレイ。その前にあのティラノ型ゾイドが現れた!

――ちぃ!
 よけられたのは、レイとゼロの心がすでに臨戦態勢にあったからだろう。
 
「どこへ行く? 諸君には帝都ヴァルハラに向かってもらう予定なのだが…」
 
 感情の読めない、抑揚のない声とともに、ティラノ型ゾイドが出現した。巨大ドリルと機動ユニット、重装甲に身を包んではいるが、フォルムで分かる。あの実験機だ。
「行かぬというのなら、諸君にはここで死んでもらうことになる!」
 
 いつの間にか、無数の敵影に包囲されている。完全に機先を制された。閃光師団の動きは、逐一監視されていたのだ。だが、どこから?
 
 閃光師団を監視する者。それは地の底にいた。彼らは、ニクスのいたる場所に地底機グランチャーを配備していたのだ。そのグランチャーの背が、発光した。

▲閃光師団を監視してきた地底機グランチャーの電磁波に、閃光師団の動きは封じられた。

▲肉弾戦で、砲撃で、次々とゼロが餌食になっていく。

 突如、閃光師団の全ゾイドが力を失った。すべての計器がでたらめな方向を指している。もし、共和国艦隊の乗員がここにいたら、これがトライアングルダラスで陥った状況と同じことに気づいたろう。グランチャーには、強電磁波を人工的に起こすカがあるのだ。
 向こうには、あのザリガニ型ゾイドと同じ防御策があるのだろう。無力化した閃光師団を、何事もないように見下ろしている。帝国守備隊が一方的に敗れたのも、この強電磁波のために違いない。

 探し求めた敵を前にして、愛機が動かない。無念さに、レイは折れるほど奥歯を噛みしめた。通信機に叫ぶ。


「貴様らの目的は何だ?」


 答えを期待したわけではない。他に何もできなかっただけだ。

▲本来の力が出せない閃光師団に、鉄竜騎兵団が襲いかかる。

「その白い機体。KFDを葬った男か」
 
 意外にも返答があった。安定しないざらついたモニターに映し出された顔。それは紛れもなく、悲しい目をしたあのパイロットだった。
「我ら鉄竜騎兵団、ガイロスのために戦わず。ただ、ゼネバスのために死す」
 その言葉を合図に、鉄竜騎兵団の全ゾイドが、閃光師団に牙をむいた。

 閃光師団は、壊滅の危機を迎えていた。ゼロが、シャドーフォックスが、コマンドACが、為す術もなく倒れていく。今や、無傷の機体は無きに等しかった。なぜか、レイのゼロを除いて。

「白いゼロのパイロットよ…」
 再び、あの男から通信が入った。
「我が名は、ヴォルフ・ムーロア。貴君の名を聞きたい」

▲ティラノ型ゾイドの完成体、バーサークフューラー。その必殺兵器の高回転ドリル「バスタークロー」は、ゼロの装甲を貫き、シュナイダーの刃さえへし折った。

 レイが追い求めた男、ヴォルフ。だが、奇しくもヴォルフもまた、レイに特別な想いを抱いていた。幼なじみ、アンナ・ターレスの仇として。
 
「レイ・グレック」
 ヴォルフの想いを知る由もなく、問われるままにレイは答えた。
 
「レイか。貴様だけはこの手で叩く」
「ムーロアと言ったな。ゼネバスのために死ぬとも!」
 中央大陸の人間で、ムーロアの名を知らぬ者はいない。ヘリック・ムーロアとゼネバス・ムーロア。かつて中央大陸デルポイをふたつに割って、覇権を争った兄弟。戦いはヘリックが勝利をおさめ、ゼネバスはガイロス帝国へと亡命したと聞く。
 
 レイは、一瞬で理解した。この男がゼネバスの血を引くのなら、狙いは中央大陸への帰還。共和国もガイロス帝国も、この男にとっては等しく敵なのだ。レイに初めて、部下の復讐や不吉な死の予感を超える、大きなものが芽生えていた。この男を倒すこと。祖国を、再びふたつに割る運命を背負ったこの男を。
 
――動け、ゼロ! 動いてくれ!
 
 ティラノ型ゾイド、バーサークフューラーのドリルが来る。
――だめだ、かわせない。

 

 レイは目を閉じた。ガン、という凄まじい衝撃音、やられた。そう思った。だが一瞬の後、目を開いたレイが見たものは、損傷し、よろめくバーサークフューラーの姿であった。


 爆音が聞こえる。空だ。サラマンダー。輸送用に改造された、カーゴタイプの大編隊だ。レイが見たことのないゾイドを積んでいる。それは、20門の高出力ビーム砲を備えた砲撃ゾイド、ガンブラスターであった。

 

 エレファンダーとの戦いを教訓にした共和国技術部が密かに開発を進めてきた機体であり、各ビームの周波数を変えて一斉射撃することでEシールドをすり抜け、敵本体に直接打撃を与える力がある。その砲撃がフューラーに直撃したのだ。

――だが、なぜここに援軍が?


 レイにとっては、信じられない幸運。それは一兵士たるレイの知らない上層部の判断。未知の部隊、鉄竜騎兵団に対して師団司令部がかけた保険だった。

▲閃光師団の危機を救うため、史上最強の砲撃ゾイド、ガンブラスター隊が、続々と戦場へ降り立った。

▲ガンブラスターの電磁シールドは、グランチャーの強電磁波と干渉しあうことで、その効果を半減させた。

 

 サラマンダーから降下したガンブラスター隊が、浮き足立った鉄竜騎兵団を蹴散らしていく。電磁シールドをもつこのゾイドには、強電磁波も効果が半減するらしい。反撃の好機だった。だが、閃光師団は未だ行動不能だ。


 その時、レイに天啓が下った。どうせ操縦不能なら、ゼロの本能に賭ける。ゼロの外装パーツを強制排除するのだ。

▲ゼロが強電磁波から逃れる方法。それは、すべての装備を排除することだった。

▲限りなく野生に近い素体に戻ったゼロ。レイと機体の闘争本能がひとつとなり、バーサークフューラーに戦いを挑む!

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