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出現!!幻の最強兵団!!

ZAC2101年6月 アンダー海トライアングルダラス

 アンダー海海戦は、帝国が勝利した。これが、ガイロスが味わう最後の大勝利である。ガイロスにもヘリックにも、もはや勝利はない。すべての栄光を、我らゼネバスの子らの手に!
(鉄竜騎兵団司令官ヴォルフ・ムーロア大佐の演説より)

▲暗黒大陸と中央大陸の間に横たわるトライアングルダラスに突入した共和国残存艦隊の運命は?

 強電磁海域トライアングルダラス。そこは、いっさいの計器が使えず、やがてはすべてのゾイドに死をもたらすと恐れられる魔の海だ。


 吹きつける横殴りの強風。不気味に輝くプラズマ放電。荒れ狂うこの波の中では、ウルトラの巨体でさえ木の葉のように頼りない。波に逆らい、必死に操縦するパイロットたち。その操縦桿も、次第にきかなくなっていく。すでに、ゾイドの変調が始まっているのだ。

▲強電磁海トライアングルダラス。それは深海から成層圏に至るまで、プラズマ嵐が荒れ狂う難所中の難所であった。

▼機能低下。操縦不能。そしてゾイドの暴走。共和国残存艦隊は、このまま全滅してしまうのか?

「海域に突入して、まだわずか30分だぞ!」
 共和国艦隊司令官が、半ば呆然とつぶやいた。
「これがトライアングルダラス…」

 大異変以来、何者も寄せ付けなかった暗黒の海の猛威は、想像をはるかに超えていた。このままでは自滅を待つだけだ。だが、海域から脱出しようにも、もはや現在位置さえ定かではない。
 不意に、ガンという強い衝撃がウルトラを襲った。味方のはずのバリゲーターの襲撃だ。操縦不能に陥り、ゾイド本来の闘争本能をむき出しにして、ウルトラに攻撃を繰り返す。そのバリゲーターに、別のバリゲーターが牙をむく。ウルトラの暴走も時間の問題だろう。
 艦隊の全兵士が死を覚悟した。だがその時だ。予想もしなかった救世主が、彼らの前に現れたのだ。

生きるもののないはずの魔の海の底で、共和国艦隊の動きをじっと監視し続けるゾイドがいた。

 自滅寸前の共和国艦隊。その前に突如、見たこともないゾイドが浮上した。ザリガニ型のゾイドだ。いかなる防御手段があるのか、この魔の海の影響を受けている様子がまったくない。機体には、はっきりとペイントされた帝国軍のマークが見てとれる。
 
「敵の新型だ!」
 共和国兵士に、さらに絶望感が広がっていく。だが、なぜだ? 帝国ゾイドには、一向に攻撃してくる気配がない。それどころか、信号灯によって、驚くべきメッセージを伝えてきたのだ。
 
「ワ・レ・二・ツ・ヅ・ケ」

 帝国ゾイドが共和国艦隊を誘導し、助けるというのか? それともウルトラを捕獲するための罠なのか? 間違いなく後者だろう。


――それならそれでいい。いざとなれば、敵陣のド真ん中でウルトラを自爆させてやる。
 共和国艦隊司令官は決意した。


「前方の帝国ゾイドに続け」

 可能なかぎりのスピードで、謎の帝国機の後を追う共和国艦隊。

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▲謎のザリガニ型帝国ゾイドは、共和国残存艦隊を誘導するかのように、プラズマ嵐の中をゆっくりと進み始めた。

▲ウルトラザウルスは、トライアングルダラスで唯一安全なルートを発見。艦隊全滅の危機は、辛うじて救われたが…。

 5分、10分が永遠にも思える。さらに脱落していくバリゲーターたち。ウルトラの速度も落ちていく。
 

――だめか…。


 諦めかけたその時、突然嵐がやんだ。穏やかな波。わずかに陽の光さえ差し込んでくる。あまりに唐突な変化であった。経過した時間からいっても、トライアングルダラスを抜け出したとは思えない。多分、魔の海の中に回廊があったのだ。台風の目のような、1本の通り道が。
 気がつくと、あの帝国ゾイドは消えている。罠ではなかったのか。

「なぜ、我々を救ったのだ?」
 分からない。共和国兵士たちは、キツネにつままれた気分だった。彼らの疑問は、すぐにさらに大きなものとなる。回廊を抜けたところは、すでに暗黒大陸の南海岸であり、そこには帝国の防衛陣地が築かれていた。それが、炎上していたのである。
――サラマンダー隊の爆撃か?

 わずかに残った艦隊を率いて上陸するウルトラザウルス。そこで彼らが見たものは、壊滅した帝国の防衛部隊であった。徹底的な破壊ぶりだ。西方大陸からの長距離空爆で、ここまでやれるとは思えない。
 ふと視線を感じ、ウルトラが顔を上げた。そこに、未知のゾイド部隊がいた。乗組員が、崩れ落ちる防衛部隊ゾイドの最後の通信を捕えた。
 
「鉄竜騎…兵団…」
 
 鉄竜騎兵団とは何か? そして今、ガイロス帝国軍に何が起きているのだろうか?

アイゼン    ドラグーン

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