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ウルトラザウルス発進!!

ZAC2100年09月 北エウロペ大陸レッドラスト(赤の砂漠)

 デストロイヤーを使うことは、あなたの誇りを傷つけるかもしれません。ゾイド乗りの戦い方ではないことは、よく承知しています。でも、ロブ。今戦いを終わらせるために、どうしても必要なのです。
(共和国軍デストロイヤー兵団ロブ・ハーマン少佐への手紙より抜粋<差出人不明>)

▲デストロイヤー兵団出撃。目標は、帝国軍の最重要拠点ニクシー基地だ。

 戦局が、大きく動こうとしていた。共和国軍ロブ基地に運びこまれた、たった1機のゾイドによって。巨大なゾイドあった。格納庫に並ぶゴジュラスが、小型機のように見える。
 
 ウルトラザウルス。ZAC2100年現在、ただ1機しか存在しないといわれる幻の巨獣。共和国軍の象徴ともいえる大統領専用機。それが今、西方大陸派遣軍の手に譲り渡されたのだ。

 その姿を見た派遣軍の将兵は、誰もが息を呑んだ。ウルトラザウルスに、その巨体よりもさらに巨大な2門の砲塔が装備されていたからだ。1200ミリウルトラキャノン。最大射程は、約100キロ。一撃でひとつの都市を壊滅させるという、破滅的な威力をもつ究極の最終兵器である。

「このウルトラザウルス ザ・デストロイヤーをもって、帝国拠点を砲撃せよ」
 それが、本国の最高司令部からの命令だった。第2次全面会戦で大打撃を受けた帝国軍が、態勢を立て直す前に勝負をつけるためだ。西方大陸派遣軍は、直ちにウルトラザウルスを中心にした超重砲部隊「デストロイヤー兵団」を編成。ニクシー基地へ向け、進軍を開始した。

ヘリック共和国軍/デストロイヤー兵団

▲デストロイド・ゴジュラス2号機。ウルトラキャノンの反動を支える。

▲ウルトラザウルスに正確な射撃目標の位置を伝える偵察用プテラス。

▲同1号機。2号機と共に、ウルトラキャノンの予備弾丸も運ぶ。

▲ゴジュラス・ジ・オーガが、ウルトラザウルスの護衛役を務める。

▲ストームソーダー。兵団の死角である上空を護衛するのが任務だ。

 ゆっくりと、ゆっくりと共和国軍は西を目指す。巨大砲塔を搭載したウルトラザウルスの速度は、時速20キロにも及ばない。そのゆるやかな歩みに、4万機以上の共和国ゾイドがつき従って進んでいく。共和国のほぼ全軍が、ウルトラ率いるデストロイヤー兵団を取り囲むように護衛しているのだ。それほど共和国軍は、この作戦に全てをかけていた。
 もちろんこの進撃はすぐに帝国軍に伝わった。帝国司令部も全戦力を投入して共和国軍と雌雄を決する決意を固めた。その第一陣は、約5千機のゾイド部隊。後続の約10万機も、再編成が終わり次第順次出撃することになっている。
 
 やがて、両軍の距離は約100キロまで縮まった。戦いを始めるには、まだ遠すぎる距離。帝国軍第一陣はここで部隊を停止させた。ここに布陣し後続部隊を待つためだ。正面から大会戦を挑むのはその後になる。いや、なるはずだった。だが…。

▲長距離ミサイルでも最大射程は約50キロ。1200ミリウルトラキャノンの射程と威力は、従来のゾイドバトルの常識をはるかに超えていた。

 突然、帝国先陣部隊のど真ん中に閃光が走った。世界が白くなるような閃光だ。続いて熱風。次に振動。最後に、轟音が耳をつんざいた。帝国の将兵で、何が起きたのか理解している者は、ひとりもいなかったに違いない。理解できないまま、帝国先陣部隊は壊滅した。100キロの距離からウルトラが放った、たった一発の砲弾のために。

 1200ミリウルトラキャノンであった。着弾地点から半径3キロ以内にいた帝国ゾイド300機は消滅。その外、3キロの700機は爆発炎上。

▲帝国先陣部隊、壊滅。辛うじて生き残ったゾイドにも、もはや戦うカはなかった。

 さらに3キロ外の800機が大破。以下、中破1500、小破1200。全滅に等しい損害だった。 ニクシー基地の帝国司令部がこの事実を把握したのは2日後のことだ。名だたる将軍たちが声を失った。

「このニクシー基地に、あの砲弾が降り注いだら…」

 間違いなく、西方大陸の帝国軍は壊滅する。だが、いくら大部隊を派遣しても、あの砲撃の前には無力だ。ストームソーダーに制空権を握られている以上、空爆も難しいだろう。もはや残された手は、決死隊によるピンポイント攻撃だけだった。発見されにくい高速ゾイドの小部隊で接近し、ウルトラに白兵戦を挑むのだ。

▲ジェノブレイカーが、サイクスが。帝国最新鋭機が決死隊として出撃していく。

 10機から30機程度の小・中隊単位で、戦場へと出撃していく帝国軍高速部隊。その中には、量産型ジェノザウラーやライトニングサイクスといった最新鋭機も加わっている。そして、リッツのジェノブレイカーも。
 
 恐ろしく分の悪い作戦だ。にもかかわらず、リッツの口元には笑みが浮かんでいた。やっと、待っていた時が訪れたのだ。赤い紋章のブレードと、戦うにふさわしい時が。リッツは、運命を確信していた。

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