共和国最強軍団出撃!!
ZAC2100年06月 ユビト港~デルダロス海
大統領親衛隊?そんなお飾りが何になります。今、兵を欲しているのは前線です。私などを守っている暇があったら、今すぐエウロペに渡りなさい。そして、戦場で歯を食いしばっているあなたの友を救うのです。
(ヘリック共和国大統領ルイーズ・エレナ・キャムフォードの政務記録より)
▲共和国最強軍団が、エウロペに向けユビト港を出撃した。
昨年夏の開戦以来、共和国大統領ルイーズ・キャムフォードは悩み続けていた。敵国ガイロス帝国が、幼い頃に暮らしていた第2の故郷だったからである。
昔、この国では「中央大陸戦争」と呼ばれた内戦があった。その戦いに敗れた王家の娘であった彼女は、一時ガイロス帝国に亡命していたのである。
やがてデルポイに戻ることを許された彼女は両国の友好にカを尽くし、その結果大統領にまで登りつめた。その矢先の開戦であった。
できれば戦いたくない。だが、自分には国を守る義務がある。ならば、せめてお互いの犠牲を最小限に食い止めたかった。そのためには、エウロペの戦いで決定的な勝利をおさめ、一気に講和にもちこむ必要がある。そのチャンスが今、訪れようとしていた。
帝国軍主力部隊は、補給不足で動けない。ここで共和国本土の予備兵力をすべて投入すれば、形勢逆転も可能である。たとえ本土の守りをカラにする危険を冒してでも、賭けてみる価値はあった。
大統領の命を受け、デルポイ大陸ユビト港から、共和国最強の本土防衛部隊20個師団(兵員約40万人、戦闘ゾイド約2万機)を積みこんだ輸送艦隊が出撃していく。空海あわせて数十隻にもおよぷ大艦隊だ。
だが、これほど大規模な輸送計画が帝国情報部の目を逃れることは不可能だった。帝国司令部は、ただちに空海両用の奇襲ゾイド、シンカーを派遺。デルダロス海域に大部隊を展開させた。
深海で、息をひそめて共和国艦隊を待ち受けるシンカー。そのソナーが、輸送艦のスクリュー音をとらえた。
「全艦浮上!各個に魚雷発射せよ!」
司令機の号令に呼応して、一斉に始動するシンカー部隊。ホーミング魚雷で、的確に洋上艦を沈めていく。
「次は、飛行艦隊を叩く!」
▲だがデルダロス海域には、シンカーの大部隊が待ち受けていた。
▲洋上艦隊を撃破したシンカーは、上空へと舞い上がった。
飛行能力まで備えるシンカーは海面に飛び出すと、今度は上空のネオ・タートルシップに襲いかかった。必殺の間合い。シンカー部隊は、勝利を確信していた。
だが突然、タートルシップの甲板が開き、そこに無数の重武装ゾイドが出現した。帝国の攻撃を読んでいた輸送艦隊は、カラの洋上艦を囮に敵の奇襲部隊を待ち構えていたのだ。
▲シンカーがミサイルを発射しようとした瞬間、タートルシップが甲板を開いた。
青ざめるシンカーのパイロットたち。その耳を轟音が貫いた。重武装ゾイドの巨大砲塔が、一斉に火を吹いたのだ。ゴジュラス・ジ・オーガ、ディバイソン、シールドライガーDCS-J…。その砲撃は、あまりにも破壊的だった。轟音が響き、閃光が走るたびにシンカーが炎に包まれ落ちていく。
やがて砲撃音が消えた時、空を覆っていたシンカーの大部隊は完全に消滅した。共和国最強軍団のエウロペ上陸が成功したのだ。
◀ 共和国最強軍団の強烈な砲撃力。深海の水圧にも耐えるシンカーの装甲を、紙切れのように引き裂いた。