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明日に向けた撤退

ZAC2099年11月 北エウロペ大陸 ミューズ森林地帯

(前略)緒戦は我々の負けだ。それは潔く認めよう。
 だが、共和国の全兵士諸君。すべてが終わったわけではない。負け惜しみではなく、戦いはこれから始まるのだ。決して屈しない闘志と希望が、いかなる強大な力も打ち破ることを、ハルフォードと彼の部下たちが教えてくれたではないか。
 今日、我々は東に撤退する。だがそれは、明日のための撤退なのだ(後略)。

(共和国エウロペ派遣軍総司令官の演説より)

▲緒戦の結果、北エウロペ大陸の80%以上が帝国軍の勢力圏内になったのたった。

 凄まじいまでの熱と光を放つデスザウラーの分子崩壊は、山頂にあるものすべてを飲みこもうとしていた。遺跡も基地も、炎の中に消えていく。
 その灼熱地獄に、1機のゾイドが舞い降りた。最後の強行偵察に飛来したダブルソーダだ。彼らは、自らの危険を顧みず、生存者を探して降下したのだ。彼らの想いは、コマンドウルフのパイロット、トミー・パリス中尉救出という形で報われる。
 もうひとつ。パリス中尉とともに回収された、彼の愛機のコクピット。そこには、古代文明の超技術の分析データが残されていた。だがこのデータが、やがて戦いの行方を大きく変えることは、まだ誰も知る由がなかった。

▲帝国軍の追撃部隊を、ステルスバイパーが迎撃。共和国軍は辛うじて全滅を免れることができた。

 ダブルソーダは、東へと飛ぶ。ミューズ森林地帯へ。ロブ平野へ。エウロペにわずかに残された共和国勢力圏へ。

 見下ろせば、共和国地上部隊も東を目指している。これほどの部隊が残っているとは意外なほどであった。部隊の仲間を失い、放心状態であったパリス中尉は、目を見張る思いだった。そう。彼にはまだ、ともに戦う仲間が、こんなにもいるのだと。

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