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激突!!2大高速ゾイド!!

ZAC2099年9月 北エウロペ大陸 オリンポス山

 勇敢なる帝国高速戦闘隊の兵士諸君。オリンポス山に侵入した敵部隊を殲滅せよ。忘れるな。いまやこの戦争の命運は、諸君の手にかかっているのだ。飛竜十字勲章を、帰還した諸君の胸に!

(帝国摂政ギュンター・プロイツェンの通信より)

▲湖を渡り、オリンポス山東側から上陸したシールド部隊。だが、帝国軍は一歩先に西側から上陸していた。

 味方部隊の支援によってオリンポス山上陸を果たしたシールド部隊であったが、山頂までの道のりは、決して楽なものではなかった。彼らより先に上陸していた帝国軍の警戒部隊が、いたるところで待ち伏せしていたからだ。
 
「最終目的地である山頂に着くまでは、できるだけ部隊を温存したい」

 部隊を率いるハルフォード中佐は、はやる気持ちを押さえ、昼は岩陰に身を隠し、夜の闇をついて疾走した。だが、夏とはいえ、8000メートル級の山の自然は厳しい。激しい風と切り立った岩に遮られ、すでに登頂スケジュールは2日の遅れを出していた。

 焦りがあったのかもしれない。明るすぎる月が不運でもあった。オリンポス山中腹の開けた岩場で、ついに彼らは発見されてしまったのだ。それも最も恐ろしい敵、シールドライガーに匹敵する高速ゾイド、セイバータイガーに。

◀ 山頂を目指すシールド部隊の前に、暴風のような深紅のゾイドが出現、一撃でコマンドウルフを撃破した。

▲コマンドウルフが分析したセイバータイガーの能力。それは、シールドにも劣らない恐るべきものだった。

紅き暴風の脅威!!

 なんて速さだ。当たらない。俺の弾が、一発もだ。奴は悪魔か?今まで俺が戦ってきた帝国のノロマ野郎たちも、こんな惨めな気分だったんだろうか?

(共和国独立第二高速戦闘大隊コマンドウルフパイロット、トミー・パリス中尉の操縦レコーダーより)

 セイバータイガーの動きは、まさに暴風だった。
 ただ1機でシールド部隊の真っ只中に飛び込み、横滑りで砲撃をかわし、同士討ちを誘い、冷静にコマンドウルフを潰していく。単にスピードが速いだけではなかった。この反射速度と操作技術。明らかにチューンナップされた機体であり、それを手足のように操るパイロットはただ者ではなかった。

▲切り立った岩場をものともせず、あらゆる攻撃をかわすセイバータイガー。パイロットの腕も一流である証だ。

「トム!レイカー!ハリー!下がれ!奴は私がやる!」
 部下をかばうように、ハルフォード中佐のシールドライガーが躍り出た。放っておけば、同士討ちで味方の損害が増える一方だ。しかも、夜明けが近い。
 これ以上戦いが長引けば、敵の警戒部隊がいやというほど湧いて出るだろう。

 シールドライガー。セイバータイガー。かつて中央大陸戦争で、宿命のライバルと呼ばれた2大高速ゾイドの一騎打ちが、時代を超えて甦ったのだ。
 だが、予想外に戦いは一方的なものになった。シールドは、最高速戦闘時に内部収納した武器を出すと機体のバランスが崩れてしまう。最初から武器を外付けしたセイバーには、火力の点で劣るのだ。
 じりじりと追いつめられていくシールドライガー。その頬を、セイバーの電磁爪ストライククローが切り裂いた。

「ハルフォード隊長!!」

 

 コマンドパイロットたちの悲痛な叫びが響く。だが、その時だ。シールドのたてがみが、まばゆい光を放ったのだ。

◀ まばゆく輝く光。それはシールドライガーの切り札、エネルギーシールドだった。反撃せよ、蒼き獅子!

紙一重の勝利!!

 勝った。俺の勝ちだ。ゼネバス帝国の残党だと虐げられたスコルツェニー家の俺が、ガイロス帝国に勝利をもたらしたのだ。俺が、英雄……。

(帝国軍特別警戒部隊セイバータイガーパイロット、ステファン・スコルツェニー少尉の操縦レコーダーより)

 シールドライガーの輝きは、セイバータイガーのパイロットの目には重要回路のショートが引き起こした放電に見えたのかもしれない。彼は、自信をもってシールドに「とどめの」ビーム砲をあびせかけた。だが、至近距離から叩きこんだはずのビームは、シールドのたてがみ周辺に発生した空間の歪みに弾き返されてしまったのである。
「エネルギー・シールド…」

▲セイバーに生まれた一瞬の隙。エネルギーシールド全開で、シールドライガーはセイバーに突撃した。

 彼もその装備については知っていた。シールドの戦闘データを入力したシミュレータで、何度も模擬戦闘を繰り返してきたからだ。

 だが、実戦で体験したエネルギーシールドは、予想を遥かに上回って強靭だった。彼は旧大戦をもとにしたデータが、当てにならないことを忘れていたのだ。彼の愛機の進化ぶりが、何よりもそれを証明していたはずなのに…。

 それでも彼が怯んだのは、一瞬だった。が、勝負はその一瞬でついていた。シールドの牙が、セイバーの喉に深々と食い込んだのだ。

 紙一重の勝利。誰よりもそのことを知っていたハルフォード中佐は、ひとり目を閉じ、戦場の女神に感謝した。が、女神はいつも気まぐれだ。この戦いの直後、オリンポス山上空に強行偵察に出たダブルソーダから、非常通信が入ったのだ。


「オリンポス山頂が、帝国軍の手に落ちた」と。

 シールド部隊は、間に合わなかった。こうなった以上、一刻も早く撤退しなければ、部隊は敵地の真ん中で孤立してしまう。だが、それでもシールド部隊は山頂をめざし続けた。山頂制圧に失敗した場合の、第二の指令を守るために。 彼らは「いかなる犠牲を払ってでも」古代遺跡を破壊しなければならなかった。

◀ セイバータイガーとの戦いから数日後、大損害を出しながらも帝国警戒部隊の包囲網を突破したシールド部隊は、ついに山頂にたどり着いた。

▲偵察中のダブルソーダは、山頂の遺跡近くに築かれた帝国基地と、中に運び込まれた謎の巨大ゾイドの影を見た。

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