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凶獣デスザウラー復活!!

ZAC2099年10月 オリンポス山頂

 その時、俺のコマンドはビビってた。どんな大部隊が相手でも、あのセイバーとやった時だって逆にはやりたってた奴が、こうクーンと鼻を鳴らしやがったんだ。それでわかったんだ。化け物だって。
(共和国第二独立高速戦闘大隊トミー・パリス中尉の証言より)

 西方大陸には、すでに滅びた古代文明の遺跡が無数に残っていた。現代の科学以上に高度な文明だったらしいが、どれも朽ち果てたものばかりのはずだ。
「そんなものに、なぜ共和国司令部も帝国軍もこだわるのか?」
 ハルフォード中佐の頭に、そんな思いがチラリとかすめた。
「突っこんでみればわかることだ…」

◀ 護衛のヘルキャット、イグアンを突破し、デスザウラーに迫るシールド。その時、未完成なはずの凶獣が始動したのだ。

 すでに部隊は半数に減り、満身創痍になりながら、彼と彼の部下に迷いはなかった。この指令を受けた時から、還らぬ覚悟はできていた。だが、突入した遺跡の中で、彼は信じられないものを見た。古代文明の装置で眠る、あまりにも巨大なゾイドを。

 

 コマンドのコンピュータが正体をはじき出す。デスザウラー。旧大戦で、共和国を滅亡寸前に追い込んだ凶獣。無敵と言われた伝説のゾイドだった。ハルフォードは、瞬時に理解した。この遺跡に、あれを蘇らせる力があるのだと。


「あれを完成させるな!」

 だが、凶獣は不完全ながら、すでに活動可能なほどに復活を遂げていたのだ。

▲シールド部隊が山頂に着いた頃、共和国軍前線は崩壊。彼らに、もはや還る道はなかった。

▲遺跡の装置に繋がるパイプから、恐ろしいほどのエネルギーがデスザウラーに注ぎ込まれていく。

▲味方の部隊をなぎ倒し、基地を破壊し、シールドを追うデスザウラー。コックピットには、パイロットすら乗っていなかった。

最終兵器荷電粒子砲発射!!

 なぜだ!?なぜ、あれは動く!?パイロットもまだ乗ってはいないのに!
 誰か、誰でもいい。あれを止めろ。あれはプロイツェン閣下直々にお預かりした、大切なコア。あれを失っては、私は…。

(ダブルソーダが傍受した、帝国基地司令官の通信より)

 不完全なまま起動したデスザウラー。それは、金属生命体の自己防衛本能による暴走だった。だが、これは本当に不完全なのか? コマンドも、暴走を止めようとする帝国ゾイドも、まるで紙切れのように引き裂かれていく。

「奴の腹に集中攻撃をかけろ!」
 ハルフォードが叫んだ。デスザウラーの腹部にはまだ、装甲が施されていない。金属生命体の急所、ゾイドコアがむき出しになっていたのだ。だが、突撃したコマンドはデスザウラーの放った光の渦に消え去った。伝説の最終兵器、荷電粒子砲が火を吹いたのだ。

◀ 地形さえも変えてしまう荷電粒子砲。想像を超えた破壊力を前にして、もはやシールド部隊に、まともに動けるゾイドは、一機もいなかった。

▲シールドライガーはとっさにエネルギーシールドを張ったが、やすやすと貫かれ、半身を失ってしまった。

シールドライガー最期の戦い!!

 私が新兵の頃、兵隊は国のために死ぬことが仕事だと教えられた。私はそれを、諸君らに言ったことはない。人は、信念のために死ぬべきだと思うからだ。だが今、あえて言う。諸君の愛機が指一本でも動くなら、這ってでも進め。そして、奴のコアを噛み砕くのだ!

(共和国独立第二高速戦闘大隊隊長エル・ジー・ハルフォード中佐の通信記録より)

 あまりにも圧倒的なデスザウラーの荷電粒子砲は、一撃にしてオリンポス山頂を死の世界へと変えてしまった。あたりに転がるのは、ついさっきまでゾイドの形をしていたコマンドウルフと帝国部隊の残骸だけだった。ハルフォードのシールドライガーも機体の半分が蒸発し、金属生命体の命を支えるゾイドコアが停止する寸前だった。だが、それでもシールドは立ち上がった。
 
 ――ここでこの魔獣を止めなければ、共和国全軍が敗れ去る。いや。もしかしたら、この世界すべてが消えてしまうかもしれないのだ。
 
 その想いが、ハルフォードと彼の愛機に奇跡的な力を与えたのだ。そして、絶望の中でなお失われない闘志が、もうひとつの奇跡を呼んだ。突然、デスザウラーが怪しく発光し、もがき苦しみ始めたのだ。

 それは、不完全な体で、制御装置もないままに荷電粒子砲を発射したために起きたエネルギーの逆流だった。

 体内から自己崩壊していくデスザウラー。ハルフォードは、このチャンスにすべてを賭けた。デスザウラーのむき出しのコアめがけて、最後の突撃をかけたのだ。


 シールドの牙が凶獣のコアをとらえた。電磁爪を振り回し、しゃにむに暴れるデスザウラーにシールドの機体が刻まれる。だが、それでもコアは離さない。そして……。
 獅子の牙が、ついにコアを噛み砕いた。急激に生命力を失い、崩壊が加速したデスザウラーは、帝国基地と、使命を果たし終えたシールドライガーとともに、光と炎の中に消えていったのである。

▲不完全な体で荷電粒子砲を発射したデスザウラーは、エネルギーの逆流によって自己崩壊し始めた。

▲半身を失いながらも、必死で立ち上がったハルフォード中佐とシールドライガー。最後の命を燃やして、デスザウラーのゾイドコアに牙をむいた。

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