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トライデント構想

ZAC2102年~ZAC2104年

カノンダイバー

 鉄竜騎兵団の奇襲によりヘリック共和国の首都は陥落した。この予想外の出来事により、共和国軍はその拠点を西方大陸に移すこととなった。そんな共和国軍にとっての生命線ともいうべき存在が、中央大陸の残存部隊に対する物資の海上補給ルートである。西方大陸から中央大陸への最短航路はネオゼネバス帝国軍の勢力下にあり、共和国軍が補給ルートを確保するには、南回りで帝国領を迂回する必要があった。

 しかし、こうした共和国軍の動きを察知した帝国軍は、戦略上の主要海域に部隊を配置することで、共和国軍の補給ルートを遮断する方策に出る。その結果、共和国の輸送部隊は南回りのルートを通っても無傷で中央大陸にたどり着くことが困難な状況となった。デルダロス海、フロレシオ海では、幾度となく激戦が繰り広げられ、共和国軍の補給部隊は、帝国軍の牙によってことごとく海の藻屑と化していた。 
 そして、ネオゼネバス帝国がホエールキング級を旗艦とする部隊をアクア海とフロレシオ海に配備すると、共和国軍は補給部隊の編成を小規模なものに切り替え、帝国軍の警戒網をかいくぐっての作戦行動を余儀なくされた。 

 そこで、急遽開発されたのが海戦用のブロックス・ゾイド、カノンダイバーであった。共和国軍の海戦ゾイドとしてよく知られているハンマーヘッドは、その完成度の高さから西方大陸戦争後も主力ゾイドとしてのポジションをキープしており、モサスレッジはこのハンマーヘッドのサポートを主眼として開発が進められた。しかし、激化する戦闘によってハンマーヘッドの個体数が激減し、生産・配備が追いつかない状況に直面する。そこで開発されたのがカノンダイバーである。カノンダイバーはブロックスの特性である、拡張性の高さと設計の容易さを発揮し、短期間でハンマーヘッドと並ぶ主力海戦ゾイドとして配備が進められることとなった。

ネオゼネバスの海洋戦力

 建国から間もないネオゼネバス帝国が、まず着手したのが海洋戦力の整備であった。これは、ドラグーンネストによる強襲揚陸作戦によりヘリック共和国首都を陥落させ、中央大陸を制圧したネオゼネバス帝国軍が、同様の作戦を共和国軍にとらせないための措置であった。
 首都防衛は鉄竜騎兵団、中央大陸に残存する共和国軍掃討には幻影騎兵団があたり、それ以外の部隊はすべて、沿岸守備隊と外洋守備隊に振り分けられたと言っても過言ではなかった。このことからも、ネオゼネバスが、いかに海洋戦力による守りを重視していたかを窺い知ることができる。
 
 戦闘能力の高いゾイドとこれまでの概念を刷新する戦略を用いたところで、共和国軍との軍事力の差は歴然である。このことを十分すぎるほど理解していた帝国軍は、次なる戦闘を有利に進めるため、中央大陸の各部族に自治を認める穏健政策をとることで内部紛争による戦力の消耗を避ける一方、西方大陸と中央大陸を隔てるフロレシオ海、アンダー海、アクア海の3つの海を利用した部隊運用「トライデント構想」により、最小の兵力で最大の効果をあげることに成功している。 

外洋守備隊“トライデント” 
 ホエールキング級大型ゾイド・マリンカイザーを母艦とする部隊で、プロイツェンの右腕とも言われるディアス将軍が指揮している。ディアス将軍の司令部は、1番艦を失ってからは、3番艦にその座を移している。 

▼マリンスティンガー

▲マリンスティンガーとシースティンガーの母艦として改装されたマリンカイザーの1、2番艦は、それぞれアクア海とフロレシオ海に配備され、広大な海域を舞台に、神出鬼没の奇襲攻撃で共和国軍の補給ルートに多大な損害を与えている。3番艦が配備されるまで、1番艦は戦略の要であるばかりでなく、Xゾイドの情報収集を行う技術情報部の工作員の回収も重要な任務としていた。 

▲1番艦、2番艦に続いてダラス海に配備された3番艦は、キメラ・ブロックスによる運用が前提となったために、大きな改装を加えられることなく実戦配備されている。ブロックス制御用のウオディック1機に対し3機のディプロガンズで小隊を編成しているのが特徴で、ZAC2104年のデルダロス大海戦で沈没するまで海洋戦力の要として活躍している。 

マリンスティンガー
 マリンスティンガーは、西方大陸戦争において、恐るべき戦闘能力を発揮したデススティンガーを祖とする海サソリ型のゾイドである。ネオゼネバス帝国の研究機関では、ガイロス帝国の頃より、デススティンガーの基本設計の完成度に着目しており、オーガノイドシステムを搭載しないゾイドに、その基本設計をフィードバックさせることが検討されていた。その結果完成したのが、ドラグーンネストとマッカーチスであり、また海戦用に特化した機体として、海サソリ型ゾイド・マリンスティンガーの開発が、ネオゼネバス帝国建国直後よりスタートしている。 

▲シースティンガーCタイプは、水中での格闘戦を主眼において設計された機体で、ハンマーヘッドキラーの異名をとる。背部の大型巡航ユニットにより長時間の作戦行動が可能となっている。 

▲マリンスティンガーの随伴機であるシースティンガーAタイプ。その背部の大型衝撃砲は、射程こそ短いものの絶大な威力を発揮する。 

▲シースティンガーBタイプ。対空砲を装備しており、高空を飛行するゾイドを撃墜する。Aタイプと同等の大型衝撃砲を両腕に装備しているため、巡航速度では他のタイプに大きく劣っている。 

沿岸守備隊は、指揮のシーパンツァーと後方支援のマッカーチスを主力に、これにシンカーを加えた立体的な戦術を用いて、共和国軍の上陸を阻止することを使命としている。
 機動力を武器とした作戦行動を得意とし、後にはシンカー、シーパンツァーの代わりにシュトルヒ、ディアントラーを配備した部隊も出現する。

 マリンスティンガー専用の母艦に改装したマリンカイザーの1番艦、2番艦は、それぞれフロレシオ海、アクア海に配備され、共和国軍の侵攻をことごとく退けた。ダラス海に配備される3番艦の就航によって「トライデント構想」は完成するわけだが、ZAC2102年よりキメラ・ブロックスが制式配備されたことにより、マリンカイザー3番艦に搭載する部隊は、マリンスティンガーとシースティンガーではなく、ディプロガンズとそれを指揮するウオディックに変更されている。
 これは大幅なコストダウンとなり、ネオゼネバス帝国は、軍事費による財政圧迫を回避することに成功。1番艦、2番艦搭載ゾイドも随時、キメラ・ブロックスへ移行されることとなった。 
 
 3番艦が配備されるまでの期間、わずか2隻のマリンカイザーで広い海域をカバーすることができたのは、その戦術によるところが大きい。基本的にマリンカイザーから出撃したマリンスティンガー部隊は、敵部隊に対し奇襲攻撃を敢行、一定のダメージを加えた時点で撤収するという戦術に終始している。
 フロレシオ海の帝国領海に侵入してきた敵部隊に打撃を与えると、追撃を行わず、首都近辺ならば鉄竜騎兵団、それ以外の地域では沿岸警備隊、アクア海に抜ける場合は2番艦に迎撃を委ねる。この地形を最大限に生かした戦術により、共和国軍は物資の補給がままならない状況になり、中央大陸に残された部隊は苦戦を強いられることになった。

ZAC2103年における帝国軍外洋守備隊の配備状況。このわずか3隻のホエールキング級大型ゾイドによって、共和国軍の作戦行動は大きな制約を加えられてしまう。

マリンカイザー殲滅作戦 
 帝国軍により海路を封鎖された形になった共和国軍は、小規模な補給部隊を編成し、その防衛網をくぐり抜けることで、事態に対応していた。だが、補給物資の絶対的な量が不足し、なによりも戦局を左右する大型ゾイドを前線に届けることが出来ないため、中央大陸に残された共和国軍の部隊は、ネオゼネバスに苦戦を強いられることになる。
 
 そのような苦境にあって、共和国軍の残存部隊が戦闘を継続できたのは、早い段階でその主力をブロックスに切り替えていたからに他ならない。ブロックスは、分解しての搬送が可能なだけではなく、いかなる状態でも運用が可能でメンテナンスに大がかりな施設を必要としないなど、最もゲリラ戦に適したゾイドであったのだ。
 補給物資もブロックスに限定してしまえば、小規模な輸送部隊で済み、万が一輸送部隊の一部が脱落しても、前線に届けられた物資を有効活用できるという利点もあった。また、ネオゼネバス帝国軍の精鋭部隊である鉄竜騎兵団が、首都防衛の任に就いていることも幸いしていた。

▲スターフィッシュ

​ヒトデ型の大型戦闘空母。機首以外の4本の足と、中央部にゾイドを格納する。

 共和国軍にとって最大のアベレージである大規模な軍事行動がとれないため、当初は共和国軍の圧勝と思われていた戦争は膠着状態に陥った。ZAC2103年初頭には、中央大陸侵攻のための海上拠点・スターフィッシュが完成するも、帝国軍の外洋守備隊にその進路を阻まれ、共和国軍はフロレシオ海の帝国領海に侵攻できずにいた。そのためにスターフィッシュはデルダロス海の共和国領海に待機している状態で、各地で小規模な戦闘が行われているに過ぎなかった。 

 外洋守備隊のマリンカイザーは、常に隠密行動をとっているために、その動きを把握することは困難を極め、共和国軍の中央大陸侵攻は遅々として進まなかった。

▲外洋守備隊トライデントの一角を切り崩すため、マリンカイザー1番艦攻略作戦は万全の態勢がとられた。ニューヘリックシティからは、サラマンダー・ボンワイブとナイトワイズによる航空部隊が、スターフィッシュからはモサスレッジ、カノンダイバー、ハンマーヘッドによる海洋部隊が、そしてロブ基地からは、ガイロス帝国から派遣されたピースメーカー部隊(共和国仕様のカラーリングに変更したジェノザウラーから成る)が出撃している。 

 しかし、ある一定の周期でマリンカイザー1番艦がデルダロス海の共和国領海に出没することが確認される。そこで、共和国軍はマリンカイザー1番艦が出撃ポイントに現れたところを待ち受け、これを攻略する作戦に打って出た。
 
 この作戦によって共和国軍はマリンカイザーの1番艦を撃破。中央大陸侵攻の橋頭堡を築くのに成功したのである。この戦いは共和国軍にも深いダメージを与えることとなったが、回収されたマリンカイザー1番艦から、ネオゼネバス帝国軍がXゾイド(軍に制式採用されていないイレギュラーなゾイド)のデータ収集をしていることと、そのデータを元にした決戦兵器ともいうべき新型ゾイドの開発プロジェクト「X計画」が進行中であることが明らかになる。事態を重視した共和国軍首脳部は、中央大陸奪還計画の早期展開を決断した。 

 ZAC2104年4月のダラス海戦、同年10月のフロレシオ海戦と経て、大規模な中央大陸上陸作戦が敢行されるのは、ZAC2104年末のことであった…。 

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